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クールトーク。第16弾 写真家・濱田紘輔がLAのコインランドリーからとらえたアメリカ社会のいま

固定概念を持つことなくカメラを向けるスタイルが、形成されたきっかけとは?

インスピレーションをもらえたり、こだわりを感じられたり、何かを始めるきっかけになったり。そんなトークを軸に、クールなモノやコトをみんなで楽しむ場「クールトーク。」第16弾は写真家・濱田紘輔が登場。アメリカ好きが高じ、同国の原風景ともいえるコインランドリーで出会った人たちを撮りまとめた写真集『THE LAUNDRIES』は各方面で話題を呼んだ。アメリカ社会を写し取るために、コインランドリーの店内で待つ人や洗濯物に目を向けたきっかけを尋ねる。


―まず、濱田さんが写真に興味を持ったきっかけをお聞きしたいです。

大きく影響しているのは、僕が20歳くらいのときにリニューアルした『POPEYE』ですかね。なかでも、写真家の平野太呂さんがニューヨークからロサンゼルスまで車でアメリカを横断しながら道中を撮る企画があって。誌面の使い方を含め、なにも知らない三重の田舎者にとってはすごく衝撃的だった。そういったところからアメリカにどんどん興味を持つようになり、メディアに関わってみたい想いも芽生え始めました。当時、印象に残っている写真ですか? 写真集だと平野さんの『POOL』、それに続く『Los Angeles Car Club』『The Kings』あたりが印象に残っています。平野さんや若木信吾さんにはすごく影響を受けましたね。そのあとウィリアム・エグルストンとかスティーブン・ショア、ブルース・ウェーバーとだんだん入っていったのかな。


―そこから会社に勤めながらご自身で写真集までつくるようになったのは、どういった経緯なんですか?

会社員時代は休みを使って海外をよく周っていたんですが、ひとつ大きな出会いがあって。ニューヨークの本屋を訪れたとき、アリ・マルコポロスの写真集を見つけて買おうとしたんですよ。アンディ・ウォーホルの元アシスタントで、いまもSupremeとかでよく撮っている写真家の。そしたら隣にいたおじさんがアリ本人で「それ、おれのだよ」って。すごくビビりました(笑)。でも、そのときにファン感を出せなかったっていうとおかしいですけど、影響を受けていることを伝えられなかったんです。自分がつくったzineなんか持っていたら渡せたのになと。それが写真集をつくり始める初期衝動になった気がします。


―その出会いは運命的ですね(笑)。『THE LAUNDRIES』では、なぜアメリカのコインランドリーに着目したんですか?

アメリカを旅行するときって、レンタカー借りてロードトリップ的に各地を巡っていたんですよ。たとえば、ポートランドからロサンゼルスの2,000kmを2週間で周ったり。その道中、コインランドリーにも通うようになって。洗濯が終わるのを待つ間、コインランドリーを観察していたんです。待っている人たちの仕草や洗濯物を眺めていたら、その人たちの趣味や生活の部分が垣間見えてきて。旅行者の立場からでも、コインランドリーを通してアメリカの内側を覗けるんじゃないかと思ったんです。アメリカ好きの僕にとっては、アメリカの日常のなかにいるというだけで居心地も良かったですし(笑)。ただ、いままで撮った写真はどこか「アメリカ好きです」で完結していて、「自分がなにを撮りたいのか」まで踏み込めていなかった。なので、あくまで日本人の自分がアメリカにより近づける作品をつくりたい想いがありました。


―<それぞれのコインランドリーで見た光景は、今のアメリカ社会の、そして世界の縮図のようにも感じられた>とのステイトメントも気になったのですが、なにが印象的でした?

郊外のコインランドリーで撮った黒人の女の子ですかね。その子は姉妹でいて、アメリカは子どもを家にひとりで置いておけないのでベビーシッターといたんですけど、その方が白人だったんです。それを見たときにドキっとして……。冷静に考えたら、黒人のお金持ちももちろんいるので当たり前なんですけど。自分がドキっとしたことに、メディアとかから入ってくる情報が刷り込まれて、まだ表面的にしかアメリカを見れていないんだなと気付きました。

―写真集を出してから、会社を辞めて写真家の道を選ぶにあたり、どのような心境の変化がありましたか?

『THE LAUNDRIES』は旅行者の目線から初対面の人を淡々と撮った作品でした。今後作品をつくっていくときは、もっとその人のパーソナルな部分に密着して撮っていきたいなと。環境が良い悪い関係なく世間からみたらマイノリティに近いような人をこれから撮らせてもらうことになるだろうと考えていて。そうしたときに、自分が安定した企業に勤めているサラリーマンでいいのかと後ろめたさを感じたんです。いままでは高卒で就職した企業で給料もらって安泰に暮らしていくしか生きる道はないとずっと思っていた。でも、『THE LAUNDRIES』をつくったことで写真家としての道に現実感が湧いたんです。もともとメディアに関わりたい想いもずっとありましたし。



―濱田さんの撮ることに対する真摯な姿勢が写真にも表れているように感じます。いま東京都内でも撮影しているようですが、今後どのような作品を撮っていきたいですか?

まずは自分の身の回りからだと思いますが、いまの東京が映るようなものやことを記録できたらと考えています。ほかにも並行して、ドキュメント的にイラストレーターの方に密着したり、三重の神島も3年くらい通って撮ったりしています。どれも作品になるかわからないんですが、結局「自分がなにがしたいか」次第かなと。彼らが持つドラマを通して、社会にどういう問いをもたらせるか。それらを見つけていきながら撮っていきたいです。


濱田紘輔
写真家。1990年生まれ。三重県出身。現在は東京を拠点に活動を行う。2019年4月に初の写真集『THE LAUNDRIES』(自費出版)を刊行し、日本各地で展示も開催された。2020年3月に創刊された『おやつマガジン』には撮影中のおやつにまつわるエピソードを寄稿。

https://www.kosukehamada.com/
Instagram: @kosukehamadas

Text: Yoshinori Araki
Photo: Yuri Manabe
Edit: Shunpei Narita

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