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クールトーク。第17弾 ザ シューシャイン&バー 長谷川裕也の足元革命から広がるきっかけ

反骨精神から生まれるインスピレーションの交換

インスピレーションをもらえたり、こだわりを感じられたり、何かを始めるきっかけになったり。そんなトークを軸に、クールなモノやコトをみんなで楽しむ場「クールトーク。」第17弾では、靴磨き世界大会のチャンピオン、長谷川裕也さんが登場。靴を磨く・磨かれる関係を超えた先に生まれる、豊かな社会の姿とは。


―今回は2019年12月、虎ノ門にオープンした「ザ シューシャイン&バー」でお話を伺います。靴磨きブースとバーカウンターが併設する珍しい形態となったきっかけは?

この場所に出店しないかと声をかけられたんですが、飲食業の形態であることが条件だったんですね。靴磨きがメインの店「ブリフトアッシュ」とは違う業態を考えていたところだったので、飲食店のPARLA(パーラ)と協業するかたちでオープンすることになりました。最近は靴磨きだけでなく、少しずつバー目的の近隣住民、近隣ホテルの外国人宿泊者も増えました。飲みに来たつもりが、隣で靴磨きに来たお客さんを見て「じゃあ自分も」となったり。


―ブリフトアッシュにはない、レザースニーカー磨きのメニューもあります。

今はビジネスシーンでスニーカーを履く人も増え、ハイブランドが作る高級レザースニーカーもたくさんある。でも革靴磨きに近い技術が必要なレザースニーカー磨きに力を入れてるところって全然ないんですよ。「レザースニーカーも磨ける」という価値を提案していくことで市場も広がると考えています。僕らが10年以上培ってきたノウハウをもとに、ビジネス街である虎ノ門出店を機にメニュー化することにしました。


―靴磨きを習慣化するきっかけにもなりうる、ユニークな特典がついた現金チャージ式メンバーズカードについて教えてください。

靴磨きの概念を変えるために面白い取り組みができそうだなと、ファンづくりも兼ねて作りました。ポイントを貯めることで靴磨きのワークショップやマンツーマンレッスン、僕が靴購入に同行するツアーにも参加できる。店は靴磨き屋に留まらない特別な時間、会話を体験する場所にもなっています。例えばデート中に靴磨きをして盛り上がったところで食事に行ったり、イベントの一環として靴磨きを捉えてくださるお客さんも多くて。予約して目の前で時間をかけて靴がきれいになる体験をすると「たかが靴磨き」から、「されど靴磨き」に価値観が変わるんじゃないかなと。そのきっかけをメンバーズカードを通して提供できればと考えてます。


―お客さんとの交流の中で得るインスピレーションや、そこから生まれたものはありますか。

お客さんには経営者の方なども多く、僕自身経営者でもあるので情報交換する中で色んな発見があり、日々勉強させていただいてます。今はとある建設会社の現場監督の制服プロデュースを手掛けています。僕の場合服は作れないけどアイデアは沢山あって、ファッションに関することはいつかやってみたいと思ってたので、靴磨きを超えてお声がけいただいたのは嬉しかったですね。


―長谷川さん自身もお客さんにとってのインスピレーションになっているんですね。「日本の足元に革命を」をモットーに日々活動する長谷川さんの原動力はなんでしょうか。

靴磨きの価値を変えることに楽しさを見出していることだと思います。子供の頃からずっと反骨精神が根っこにあって、自分にしかできないことをやりたいという思いが強いからじゃないかと。もう一つ、従来の靴磨きはおしゃれをミックスするという発想があまりなかった。僕にはアパレル販売員の経験があって、元スケーターでストリートカルチャーも好きなので、そういう背景も活きているかもしれないです。


―靴磨きを長年やられている中で、印象的なエピソードはありますか。

10年ほど前に出会った50代くらいの男性のお客さん。ボロボロの靴を持ってきて「新人時代から何十年と履いてる靴なのでそろそろ捨てようと思う。その前に磨いて欲しい」と言うんですよ。これから長く履くためじゃなくて、まるで死化粧のような靴磨きがあるのかと。すごく感動して、一生懸命磨いた後に渡したら「まだ履けるね!」って言ってましたけど(笑)。でもその時初めて、靴は人生を共に歩むパーソナルな存在だなと実感して。改めて靴磨きってすごくいい仕事だなと思いましたね。


―靴磨きの経験がない初心者にはどんなアドバイスをしますか。

まずは僕の著書やYouTubeに沢山出てる動画を見て自己流で磨いてみるのがいいかもしれないです。そして「プロがやったらどれくらい違うんだろう?」と興味を持ってもらうことが、プロのもとで靴を磨くきっかけになるのでは。あとスニーカー好きな人は本格的な革靴にハマる可能性があると思いますよ。


―最後に、今後長谷川さんが目指しているところを教えてください。

シンプルですけど、靴がきれいになると人ってすごく元気になると思うんです。綺麗な靴を履くと歩き方も変わります。まだ路上で靴磨きをしていた頃、「今自分の目の前で歩いてる人たちの靴が全部ピカピカになったら、皆シャキッと歩いて日本がめちゃくちゃいい国になるんじゃないかな」って心の底から思った瞬間があって。そういう風景を見たいと思いながらやっています。数年前から僕がアドバイザーを務める国内の靴磨き大会「GINZA SHOE SHINE FESTA」など、靴磨き界の底上げをする動きも良い流れで広まっている感触はあります。日本は靴作り、修理、そして磨き全てにおいてトップクオリティ。そんな国で、朝出かける前に歯磨きと同じ感覚で靴磨きが習慣となるのが目標ですね。


長谷川裕也

1984年生まれ。千葉県出身。靴磨き職人。靴磨き専門店「Brift H(ブリフトアッシュ)」代表。20歳のときに丸の内の路上で靴磨きを始める。2008年6月、南青山にカウンタースタイルの靴磨き専門店、Brift Hを開店。2017年5月、イギリス・ロンドンで行われた「ワールドチャンピオンシップ・オブ・シューシャイニング(靴磨き世界大会)」で優勝し、「靴磨き世界一」の称号を得る。2018年より銀座三越主催「GINZA SHOE SHINE FESTA」アドバイザーを務める。著書に『靴磨きの本』『自分が変わる靴磨きの習慣 自己管理能力が最速で身につく』。

https://brift-h.com/
Instagram: @tsb.toranomon

Text: Ayae Takise
Photo: Eisuke Asaoka
Edit: Shunpei Narita

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