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妄想インドカレーネグラは今日も妄想する


その日の気分で作る即興インドカレー

高円寺に、妄想でカレーを作るレストラン、「妄想インドカレー ネグラ」がある。店を営む大澤思朗さんと近藤麻衣子さんは、インドには行ったことがなく、自分たちが妄想で思い浮かべるインドカレーを出しているのだという。「インドっぽい」店内で、店主の大澤さんに話を聞いた。

元々は「ネグラ」というチームで、5年ほど前からクラブイベントなどでカレーのケータリングをやっていたが、2016年に高円寺にある取り壊しが決まっているビルで半年間限定の実店舗をオープン。その年の9月に現在の場所で店を構え、現在オープンから1年ほどが経ったところだ。

カレーは日替わり、というよりも鍋に用意された分がなくなれば終わりという鍋替わりスタイル。

「先日1周年を迎えるまでは、日替わりと2種盛りを作っていたんですけど、最近は定食スタイルのみにしました。昨日まで出してたのは『シラスのカレー定食』。シラスをカレーにすることはあまりポピュラーではないですが、クセになる味なんですよ」

その日の気分でメニューを決めているというが、どのタイミングで妄想するのか。

「八百屋さんや魚屋さんで話して、今一番美味しい食材を教えてもらいます。作りたいものありきで食材を集めるのではなく、旬の素材を見つけて、それに合わせます。今あるものが一番旬だから美味しいはず。それに、旬のもの同士って味の方向性が似ているものが多いんです」

食材を買うのは高円寺が中心で、たまに遠くに行ったりするが、基本的には業者は挟まず自分の足で買いに行く。以前はグラム単位で書き留めていたというレシピも今はない。レシピがあるとどうしても食材ではなく正しい数字を追うことに注力してしまいがちだからだ。即興で作るために、目の前の食材と向き合うようにしている。


食材の組み合わせは自由に、シンプルに

店を訪れた日の定食メニューは、「秋鮭のカレー定食と4種類のスパイスを使った野菜の付け合わせ」(1,200円)。+「タンドリーチキン」(300円)。旬の秋鮭をメインに、しいたけをベースに使ってコクを出し、バーズアイという極小唐辛子を使ったカレーだ。甘い、酸っぱい、辛い、すべての味覚を味わえる。大澤さんに混ぜても食べてみてと言われ、秋鮭カレーや野菜、トッピングのタンドリーチキンと混ぜて食べてみたが、なるほどまた違う味が楽しめるし、混ぜたあとの味に違和感がないことに驚く。

自由な発想といえば聞こえはいいが、大澤さんはイタリアンレストランで4〜5年修行したり、その後もほかの飲食店に勤めたりと、どっぷりと飲食業界で働いてきた。クラブイベントに出店していることやその風貌から、一見音楽やアートの世界の人にも見えるが、カレーの素材の組み合わせにしても、自由なだけでなく今までの経験に基づいている。

「イタリアンレストランで働いていたとき、特にパスタってラグーとか決まっているものもあるけど、オイルベースだと食材の組み合わせでいろいろな味にできるんですよね。そのときの食材を合わせる感覚は、今にも活きてます。自由に作ろうというときもあれば、シンプルに作ろうと思うときもある。今はその振れ幅があってもいいかなと思っています」

カレーといえばスパイスも大切な素材。スパイス店で働いていたこともあるほどスパイスが好きでこだわっていたときもあったが、最近は趣向が変わって、素材そのものを大切にするようになってきた。奇抜なスパイスを使うというよりは、なるべく最低限のスパイスでカレーを仕上げるようにしているそうだ。

鍋ごとに変わるとはいえ、大澤さんが考えるネグラの味とは。

「ベースに野菜。野菜の優しい味に、えぐ味や苦みもアクセントに残っているようなカレー。えぐ味や苦みもありきで野菜の味なので、そのまま楽しんでもらうようなカレーかな」


ネグラが今もケータリングをする理由

食材への好奇心が止まらない大澤さんは、12月15日に青山にあるCommune 2ndのiki-baで、練馬区の食材を使ったイベントを行う。その名も「出没!ネリ街ック天国」。練馬区の農家とコラボレーションしたフードを出したり、練馬のカルチャーを伝えるようなイベントにしたいのだそう。

常設の店舗を持ちながら、なぜ以前と同じようにイベントにも力を入れているのか。

「お店にずっといると、気付いたらルーティンになってしまうと思うんです。決まったレシピだったり、使いやすいスパイスだったりが固定されていってしまう。自分たちが楽しみたい、だから様々なカレーを作っています。外に出ていくことで新しい情報が入ってきて、カレーにも影響がある。その状況が心地よいので、いろいろなところに行けたらと思っています」

次にやってみたいことは、日本全国キャラバン。その土地土地の食材をもっと知って、いろいろなカレーを作ってみたいという。ちなみに、そんな大澤さんたちだからこそだが、本場のインドカレーに影響されてしまうので、インドに行く予定はないのだとか。

カレーも夢も妄想し、実現し続けているネグラチーム。自由な気持ちで食材や人と出会い楽しむ彼らの熱い妄想は、カレーを通じて伝わってくる。

妄想インドカレーネグラ
東京都杉並区高円寺南3丁目48−3

TEXT: 泉友果子
PHOTO:寺沢美遊

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