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お酒と音楽によってムードを育む下北沢のバーDRINK & MOOD mou


mouの考える今ならではのムードづくりとは?

下北沢に昨年オープンした「DRINK & MOOD」をキャッチコピーに掲げるバー、mou(ムー)。クラフトビールと自然派ワインをメインに扱い、DJブースもあるちいさな店内は、音楽好き、お酒好き、カルチャー好きなど、さまざまな界隈の交差点となり、なにやら賑わっている様子だ。


都内のクラブシーンに入り浸り、自然派のレストランudoでも働いていた、店主のmoriura氏に場作りのコンセプトを聞かせてもらった。

「まずは場の雰囲気(ムード)を大事にしたいですね。ムードは人と人とのコミュニケーションに重要です。あくまで主役はムード。お酒や音楽は媒介で、お店に来るのはどんなきっかけでもいいと思っていて。自然派のワイン好き、クラフトビール好き、 DJや音楽目当てでイベントに来てくれる人、カルチャー全般が好きな人たちが交わるところが意外となかった。だから、お客さんの層がバラバラだけどミックスされて接点ができる場所になればと」


店を始めようと思ったきっかけは、自分の興味のあるお酒が飲めるちょうどいい距離感の場がないこともあったからだという。

「そもそも自分はDJカルチャーで育っているんですが、音楽を求めて夜遊びをしに行くところはいわゆるバーにあるようなメジャーなお酒が多くて。逆にお酒メインのところは、音楽との距離感が自分の求めるものと違っていたり。どちらの場も好きですし、基本的に自分のワガママな話なんですが。」


こういった小規模のバーの魅力は、気軽に語り合える点もある。

「今、改めて場所に魅力を感じています。近年のSNSではあらかじめの正解があった上でやりとりする事が多いような気がしていて、フェアなコミュニケーションがやりにくくなってきているように感じます。具体的な気持ちのいい場所があることによって、もっとポジティブなコミュニケーションが出来るようになる可能性に期待しています。そういう余裕というか豊かさのある場を僕は目指していて、それがムードという言葉にも繋がっています」

ドリンクメニューからエクストラな5品をピックアップ


さて、お酒といっても種類もさまざま。mouにおけるお酒との距離感を伺った。「自分はお酒は嗜好品の要素が強いものだと考えています。来てくれた方にはひとつひとつ、お酒に対して面白いと思える瞬間に出会える場を提供できたら嬉しいです。なかでもカルチャーとしての視点を含んだ嗜好品としての強度があるものが好きですね。生活に於けるエクストラな部分を極めようとしている人たちはすごく面白くてエネルギーがある。ウチは小さいし自分自身がジャンルのプロフェッショナルではないから、ワイン、ビール問わずそういったものをセレクトすることに意味があるのかな、と思っています」

では、mouで扱っているメニューから、日常とは違ったエクストラ感が楽しめる5品を選んでもらった。気になるものがあれば、お店で頼んでみよう。



オレンジ(2018) / ラ・グランジュ・デ・ロンクル・シャルル(写真左から一番目)

「ゲヴェルツトラミネールを主体に醸造したアルザスのオレンジワインです。オレンジワインは白ワインの一種なのですが、古くはグルジアなどで伝統的に作られてきたものでアンバーワインとも呼ばれるその独特な色が特徴です。通常白ワインは、種と皮を取り除いて作りますが、これは白ぶどうを赤ワインのように種と皮ごと発酵させるワインで、白ワインよりタンニンも強く濃厚で強い味わいがあるものが多いです。アールグレイやグレープフルーツのような華やかな香りとビワのようなフルーティで濃縮された旨味を持つワインで、夏はしっかり冷やしてグビグビ飲むのもオススメです」


エトセトラ・エトセトラツ(2018)/モメントモリワインズ(写真左から二番目)

「メルボルンの元トップクラスのバリスタ、デイン・ジョーンズが手がけるオーストラリアの新星ドメーヌ、モメントモリワインズのロゼワインです。イタリアの自然派ワインの第一人者でもあるラディコンのワインに感銘を受けてイタリア品種のぶどうだけを使用し、赤ぶどうの品種と白ぶどうの品種を50%ずつ混ぜた珍しいワインです。圧倒的な複雑さとスルスルと飲めるピュアでフレッシュな旨味を持つ素晴らしいワインです。ワインが苦手という方にも是非体験してほしい一本です」


ソルガ・ルージュ(2016)/ラ・ソルガ(写真中央)

「自分が積極的に自然派ワインを飲むようになったきっかけにもなった、フランス・ラングドッグの作り手アントニー・トルテュルの手がける赤ワインです。まずはみずからバンドをやるくらいにハードロックが好きな彼らしい真っ黒でパンチの効いたエチケットが目を引きますが、以前にコペンハーゲンにある世界一のレストランとも言われるnomaにオンリストされた事から分かる確かな実力の作り手です。音楽に例えるならdisco classicに対してのdisco re-editのようなアップデート感というか、フレッシュなアイデア、アティチュードで歴史あるワインに立ち向かう彼のスタイルは大好きです。サンソー100%でダークチェリーのような味わいとハーブ、柑橘類の爽やかな香りになめし革のようなワイルドなニュアンスが混在する面白いワインです」


サッシーポニー/ジャイガンティック ブリューイング(写真右から2番目)

「ジャイガンティックはマッドチェスターの音楽を愛する創始者の手がけるポートランドのブルワリーです。アメコミテイストのイラストに日本テイストの混ざっている不思議な魅力があるラベルも特徴です。軽やかなペールエールで暑い日にもピッタリです。公私ともに仲良くさせてもらっている、下高井戸のHATOS OUTSIDEから譲ってもらっていますが、HATOS OUTSIDEからはビールだけでなくキーマカレーも分けて頂いていてmouでもたまに食べられます」


マザリン/オムニポーロ(写真右から1番目)

「オムニポーロはウチが今メインで扱っているスウェーデンのブルワリーで、マザリンはそこの手がけるスペシャルペールエールです。醸造を手がけるヘノクと彼のビールに惚れ込んだグラフィックデザイナーのカールの二人で立ち上げたという異色なブルワリーで、とても自由なアプローチで作るビールは見た目からも伝わる自由で楽しい味わいです。カールはジーンズブランドCheep Mondayの創始者の一人という経歴もあります。今まで自分はビールをあまり飲まなかったんですが下北沢の北沢小西さんという名店で飲ませてもらって、感動して取り扱う事にしました」




ミュージックバーでもDJバーでもないスタンス


ムードを作り上げるために内装や音響にもこだわっている。インテリアの制作は、SUEKKO LIONSと、同じビルの1階にある古着屋のオーナーの海野さんのインテリアチームOTOPRODUCTによるもの。植物はsunroom、mood tokyo。スピーカーは田口音響、サウンドシステムは知人のエンジニアのヒランヤアクセスの藤田晃司さんに依頼したという。


「内装に関しても自分の手の届く範囲で、自分が素直にいいなと思うものを集めるというスタンスで製作しました。自分が信用しているモノを作る周りの友達に、力を借りているところが大きいです。僕は今まで遊んできてしかいないので、遊んできた経験の還元として形にするのが1番嘘がないかと。変にかっこつけても背伸びすしぎても気持ち良くないし、そういうのって結局お客さんにバレちゃうと思うので。」


店内にあるDJブースでは、都内のクラブシーンで名のあるDJ、MOODMANやokadadaや、イギリスのNTS Radioでも番組をもつadam okoなどがプレイする日もある。ただ、クラブとバーの中間がDJバーではないと考え、あえてDJバーとしては打ち出していないのにも理由がある。

「開店前に、嫁入りランドのみゆととやDJのshakkeさんに店名を相談している時に、ミュージックバーでは、その言葉のイメージに引っ張られすぎてしまうかもという話になったんです。レコードが壁一面あって、ターンケーブルや真空管のアンプ、ヴィンテージのスピーカーがあって、歴史のある音楽が流れているみたいな。また、 DJバーも名前としてダンスミュージックの側面が強すぎる気がして、店でやりたい事にフィットしないかなと思って少し避けるようにしています」

誰でもカテゴリーで店の雰囲気を想像してしまう。それもあって「DRINK & MOOD」と付けたのは、今までとは違った雰囲気を醸し出したいからだという。「音楽とお酒と人間。その3点の距離感を気持ちいい状態にするように『DRINK & MOOD』と付けました。自分はDJを約10年していますが、その過程で触れ合った”良い状態”みたいなものを扱いたかったので何かひとつだけをメインにせずに場を作るためには”ムード”という言葉のニュアンスが一番近いかなと思ったんです」

mouのように、環境にこだわり自然派ワインやクラフトビールをメニューに加える店は都内に増えつつある。「最近はホテルのラウンジ的な場所にDJブースがあるCITANやTRUNKなどがありますが、それらに近い空気感で音楽やお酒をセレクトする場所でバー単体で営業しているのはあまりないのかなという気がします。なので強いて言葉にするなら、“ラウンジ”とか”サロン”とかがイメージに近いかもしれません。今後気持ちいいムードで人間と人間のコミュニケーションできる場になっていけたら嬉しいです」

行くとなにかある気がする場


ときおり自然派ワインを愛する、尊敬する先輩たちも来店するそうだ。「ワイン好きでは、先日オリジナルのワインバックも作ったファッションブランドBALの江田さん、蒲谷さんなどからは日頃からサポートして頂いています。また、ワインを扱う方で尊敬する方だと仕入れでもお世話になっている幡ヶ谷のflowの深川健光さんや、そのBALとコラボしていたHuman Natureという酒屋さんの高橋さんも尊敬しています。高橋さんは自然派ワインそのものの魅力だけでなく、多角的なアプローチで自然派ワインを取り巻くカルチャーの面白さを伝えるZINEを作っていたり、音楽×自然派ワインのイベントをやられてたりととても面白い方です。BALとHuman Natureの様々なコラボレーションは、僕が面白いと思うカルチャーの交わり方としてひとつの具体例をやられた感じがして超クリティカルでした。そういうクロッシングが自分の一番興味を持っている部分でもあるので。店でシルクスクリーンやリソグラフの作品を置いているのも、そういう考え方が基になっています。udo時代にそういうカルチャーを横断する面白さを教えてくれた、kokilikoの米田牧子さんも時折寄ってくださいます。」

お酒や音楽にまつわる周辺文化の奥深さを知る、その入り口となる場を目指しているのはmouならではだろう。「色々と生活に余裕を持ちにくくなっているなかで、どうやって豊かさを考えていくのかという部分で、エクストラの選択肢に入れて頂けたら嬉しいです。あそこ行けばなんかあるっぽい、という雰囲気が理想かもしれません。来てくれた皆さんがサムシング・グッドを持って帰ってくれたらいいなと思いますね」



DRINK & MOOD mou

東京 世田谷区北沢2-32-7 3A
営業時間19:00-26:00頃 <火曜定休>

Instagram: @mou_shimokita
Twitter: @mou_shimokita

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