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NY発、細菌学者の手がけた“Natto Sand”

ニューヨーク在住者から見たヘルシー志向への変化

世界の美食が集まるニューヨークではあるけど、2017年のニューヨークシティを見渡すと犬も歩けばコールドプレスジュースにスムージー、サラダバー、アサイボウルにポケボウルにあたるという具合に、ニューヨーカーのヘルスコンシャス度は増す一方だ。流行のサラダバーSweet Greenともなると昼時はサラダを買うのに45分の行列ができるのは当たり前。ハワイから来たポケボウルはお米中心ということもありグルテンフリー(穀物の胚乳から生成されるタンパク質の一種を摂らない)な人々には新しい食のオプションとして定着し、昨今ニューヨークの街中ではどの通りでも“Poke”の文字を目にするようになった。医療費が高額なアメリカだけに軽々と病院に行く人は少なく、その代わりにヘルスコンシャスであることは健康とお財布をプロテクトする護身術と言っても過言ではない。

もちろん日本食はヘルシーなものとして認知され、新しい日本食レストランのオープンも盛んだ。自宅で味噌汁を作るニューヨーカーも多く、アメリカメイドのオーガニックの味噌もスーパーで普通に見かけるようになってきた。そして2017年ともなると「ガイジンはきっと食べられないよねー」と言われ続けた、あの”納豆”を愛するニューヨーカーを私は何人も知ってるし、ダウンタウンを代表する美術館New Museumのミュージアムカフェでなんと“Natoo Cheese Sandwitch”($7.50)の販売が始まった。ニューヨーク生まれの納豆<NYrture>を使った、納豆とチェダーチーズをホットサンドしたものだ。東京でもカフェやレストランで見かけたことのないと思われるかなりの珍味!がニューヨークを代表する美術館のひとつで愛されているそのわけとは……。

研究家視点の発酵食づくり

ニューヨークメイドの納豆ブランドNYrtureを主宰するAnne Yonetaniはフィラデルフィア出身のジャパニーズアメリカン。コロムビアユニバーシティで微生物学のPHDを取得し、バイオロジカルリサーチサイエンティストとしてコロムビアユニバーシティやハーバードメディカルスクールなどの研究所で15年以上働いていた筋金入りの細菌学者。その彼女がバクテリアサイドから納豆に魅せられてNYrtureを2015年にスタートした。サイエンティストのアンから言うと発酵のプロセスは簡単だが大切なのは“大豆選び”。納豆は何から作られているのと聞かれると「大豆とバクテリア!」と清々しく応えるAnneの納豆は、Non-GMO(非遺伝子組み換え)の大豆を育てるサスティナブルな農家と提携したアメリカメイドの大豆を使っている。ちなみに現在日本で食される大豆のほとんどがアメリカから輸入されているものだそうだ。日本はその消費量に対して敷地面積が少なく大量に育てられないのが原因らしい。


ウィリアムズバーグにあるNYrtureのキッチンスタジオには日本製の業務用の納豆釜や、温度がコントロールできる冷蔵庫があり、納豆菌は日本から輸入している。Anneはこのスタジオに週2度ほど通いすべて手作りしている、まさにクラフト納豆である。昨今はヘルスコンシャスな人々だけではなく一般的にも認知されてきたヨーグルトやキムチにも含まれる善玉菌こと”プロバイオティック”が注目されてか、納豆にも多く含まれることもありNYrtureにはアラバマ、オクラホマ、イリノイといったニューヨーク以外の都市からもオーダーもあるという。他にも納豆にはプロテインやファイバー、ビタミンBや昨今話題の血液をサラサラにするビタミンK2ことナットウキナーゼなど、摂取しなくては!と駆り立てる栄養素でいっぱいなのだが、ただ納豆が味噌や豆腐のごとくアメリカで大ブレイクするにはあのネバネバ問題をどうするかという問題が……。


研究所生まれのNattoが美術館へ


New Museumのカフェこと<Hester Street Cafe>のオーナーErik Zimmermanは、今年の9月にNew Museumが主宰したストリートフェアでNYrtureに出会い、Ann流納豆普及のためにサンプルに作った納豆とチーズがのったトーストを食べた時に、さほどネバネバは気にならなかったという。それよりも納豆とチーズとのユニークな相性に感銘を受け、カフェでの発売を即決したそうだ。Annがこの時使ったのは新製品の"ブラックナットウ”という黒豆を使ったもので大豆に比べると甘みがある。アメリカ人の”チーズ味”に対する愛は計り知れないというか、もはやネバネバまでかき消すほどだ。かなりユニークなテイストとはいえ1日に少なくとも10個はオーダーがあるという。美術館ということで世界各地からのツーリストが訪れるが納豆の存在を知っている人も多く、カフェで販売している瓶詰めのNYrture納豆を購入するひとも多い($14)。ちなみにカフェでは、瓶に入ったジャパニーズヴィーガン弁当“CHISO-NYC”も発売している($12)。Erikいわく「納豆は肉と同じような栄養素があるわけだし、だったら納豆を選ぶよね。グットスタッフだと思うよ」。

•••SAY HELLO TO CHI-SO-NYC ••• from Georgia

TEXT:工藤キキ
Header Image By Vicky Wasik, seriouseats.com

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