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一期一会の飲食店、地のものバルMUJO

代々木公園駅から徒歩1分。ランナー御用達の銭湯・八幡湯の真向かいに一風変わったコンセプトの店がある。2017年12月にオープンした「地のものバル MUJO」には、選りすぐりの和酒と食材が全国各地から揃う。単なる日本酒バルと思うことなかれ、MUJO(無常)という名の通り、ここは訪れたその日だけしか出会えない貴重な逸品に溢れる”諸行無常”の空間なのである。

ー ストーリーと食材を同時に仕入れる

旅先でしか出会えない、その土地の特産物。名の知れたものもあれば、知る人ぞ知る隠れた逸品もある。生産者が想いを込めて丹精につくり続けるそれらには、人生同様、銘々に固有のエピソードが付随する。MUJOでは、提供される全てに対して店主から心のこもった説明が添えられる。「ただ美味しいものを食べるだけではなく、その食材に詰まったストーリーを知った上で食べるとより一層楽しめる」と、オーナーの田中は話す。


MUJOには”定常”メニューに加え、”無常”メニューが存在する。個人や小規模で営んでいる生産者にとっては、毎日決まった量の食材を安定的に供給し続けることの難しさ故に、どれだけ優れた食材であっても大手流通を介して全国にその存在を知ってもらえないケースも多い。そのジレンマを解消するべく、MUJOでは「本日のMUJO」と題してその季節だけ味わうことができる逸品を紹介しているのだ。「マーケティングに手を回すことができない地方農家の手助けになれば」と、東京の中でも特に食への関心が高い代々木エリアを選び、生産者の想いを代弁している。


ー バックグラウンドは金融、養鶏場と酒屋


MUJOは、異色のバックグラウンドを持つ3人を中心としたチームによって運営されている。金融業界に6年身を置く田中孝佳、循環型農業で営む養鶏場に従事していた粕谷成正、そして酒屋に勤めていた小原辰生。飲食一本道できたメンバーではないからこそ、「単なる飲食店ではなく、MUJOを1つの”箱”と捉えて拡げていきたい」と語る。


例えば仕込みの時間は、3年の留学経験を持つ小原による英会話レッスンが開催されている。基礎英会話に加えて、「お酒」という共通の関心テーマに紐づく会話も英語で行われる点が特徴だ。過去にシェアハウスで外国人向けに日本酒のイベントを開催していた経験から、今後は観光客向けの企画も考えているという。


ー「きっかけ」が見つかる場所へ


「モノが売れないのではなく、みんな買うきっかけを探してるだけだと思うんです」と、粕谷は話す。「飲食店は直接プレゼンテーションができる数少ない場所」だと位置付け、生産者から直接仕入れているからこそ伝えられる情報を訪れる客に提供している。もし実際に味わってみて気に入ったものがあれば、生産者から直接購入できるように紹介することも可能なのだとか。

東京にいながらにして、地のものと出会える場所。今日も暖簾をくぐれば、店主が繰り広げる小話を肴に、その日その時間に居合わせた一期一会の人々と酒を交わすことができるだろう。

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