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デザイン会社のこだわりがつまった終日one

どこかハイソな印象がつきまとうエリア、代々木上原。その駅前に「終日one」という少し変わった場所がある。駅から徒歩1分、井の頭通り沿いにあるガラス張りの建物をのぞくと、入り口には色とりどりの花がディスプレイされており、その隣にはコーヒーカウンターがある。ここはカフェなのだろうか?しかし、窓際のカウンターでPCを立ち上げ、ビールを片手に仕事をしているらしき人もいる。遊び心満載のポスターやメニューが貼られた扉を開けて一歩奥に進んでみよう。


コーヒーカウンターの向こう、建物の1番奥のコーナーにもう1つカウンターが存在する。それが「終日one」だ。ドラフトで提供されている箕面ビールをはじめ、海外のクラフトビールが数種類揃えられている。実はこの「終日one」、グラフィックデザイン会社CIDER INC. が運営を手がけている。なぜ、デザイン会社の新規事業として飲食事業を選択したのだろうか?CIDER INC. CEOの阿部卓哉にその理由を尋ねた。

- スピードとクリエイティブが求められる場所をつくりたかった


話を聞くと、クリエイターが所属するデザイン会社として、クライアント依頼の制作とは別に、日常的に自発的なデザインをクリエイトしていける環境をつくりたいと常々思っていたそうだ。そう考えた時にピッタリとはまったのがファッションブランド(CYDERHOUSE)と飲食事業だったのだという。「飲食は実はデザインが全て網羅できるんです。内装もそうだし、日々新しいメニューやキャンペーンを生み出し、デザインしていかなければいけない。すごくスピードが求められる環境なんですよね」


- サンフランシスコの心地よさを代々木上原で


終日oneがある建物は3店舗でシェアされている。実は入り口に飾られている植物は「終日フラワー」というお花屋さんのディスプレイであり、実際に買うことができる。そしてこだわりのエチオピアコーヒーが飲める「TO.MO.CA COFFEE」。クラフトビールとコーヒーとお花。なぜこの共通点のなさそうな3つの店舗でシェアしようと思ったのか?そのアイディアの源流は、阿部が1年間サンフランシスコで過ごした体験にあるという。

「フラッと寄ったお店が空間をシェアしていて、食事をする席が空いてなかったんですけど、『席空くまであっちのバーで飲んで待っててよ、席空いたら呼びに行くから』って。なんか、そういうのいいなって感じたんですよね」。滞在していたのは2011年。ちょうどサンフランシスコ界隈でクラフトビールがざわざわし始めていたこともあり、帰国後クラフトビールバーをオープンすることを決めたという。


- 箕面ビールとかすうどん


かすうどんとは大阪の南河内地域で食べられてきたうどん。だしの中に、牛のホルモンの細切れにした脂の乗った牛の小腸(ホルモン)を脂が抜けるまでじっくり素揚げした「油かす」が入っており、肉の旨みが凝縮されていて独特の風味がする。

阿部は東京出身にも関わらず、なぜ箕面ビールとかすうどんという、大阪感満載のメニューを打ち出している。「初めて日本で飲んだクラフトビールが箕面ビールで。何だこれうめー!と思ったので。かすうどんも大阪に行った時に食べて、これもうめー!って(笑)」。東京では入手困難な「油かす」は、友人づてで紹介してもらった大阪府松原市の工場にお願いして仕入れているのだとか。

「今ではそこのおばちゃんとお歳暮を贈り合う仲になりました」

ほかにもイギリスのパブでは定番のはフィッシュ&チップスや、アメリカンスタイルのホットドッグもある。サンフランシスコのビアバーをベースにしながらも、各国のいいものを融合しているのが終日one的やり方だ。


- 走り書きからうまれた「終日」と何度も描いてできた「one」のロゴ


終日oneの特徴的なポイントとして、お店のロゴにも着目したい。デザイン会社ならではのオリジナルで制作された目を引くオシャレなロゴ。「終日」は5年程前に誕生したのだとか。「仕事の電話で『終日ダメなんですよ〜』とか言うじゃないですか。その時に無意識に走り書きしていた文字がロゴにできそうな雰囲気があって。これを活かせるんじゃないか?となって整えてロゴになりました」。偶然の産物として生まれた「終日」に対し、「one」は数百回以上も修正を重ねて一筆書きになるようにつくりあげられた。


- フラッと立ち寄ってもらえる場所でありたい


阿部は終日oneを訪れるお客さんにどのように過ごしてもらい、何を感じてもらいたいのだろうか。「うーん...嫌な気持ちになってほしくない、かな(笑)そんなにこっちが気を張って何かを押し付けたいことは一切なく、店側は基本的にはフラットに干渉しすぎないようにしています。お客さんに求められればもちろんお話もしますし、親切な対応を心がけています。」そこにもやはりサンフランシスコで体験した、ちょうどいい接客が活きている。「今日はゆっくり寝れそうだな、と思って帰ってもらえれば嬉しいですね」。

予約をしなければいけないレストランも素敵だが、その日の思いつきで立ち寄れる良い店があってもいいのではないか。おいしいご飯に辿り着くまでに、できる限り何の摩擦もあってほしくない。「とりあえずone行こっか」と言ってもらえるような場所でありたい。そうした想いで開かれているのが終日oneというクラフトビールバーであり、ハコである。「お客さんとスタッフとハコと、絶妙な距離感を常に保っていたいんですよね」と話す。


その日も終日oneには思い思いに過ごす人々で溢れていた。仕事終わりのビールを楽しむ人、コーヒー片手にのんびりと誰かを待つ人。暗くなると「BGM係」というDJイベントも始まり、さらに良い意味でカオスな空間へと様相を変えていく。カオスなのだが、なぜだか居心地がいい。誰もお互いを気にしてないからこそ、リラックスできる場所。それが終日oneの魅力なのだろう。実はこの「one」には1店舗目という意味も込められているらしい。CIDER INC.が仕掛ける、two・threeのプロジェクトも目が離せない。

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