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茶文化をアップデートする、ティーキュレーター長谷川愛

お茶で世界にピースを。若きヒップスターの挑戦

「サードウェーブ」以後、完全に市民権を獲得したコーヒーのムーブメントの一歩後ろから、新たな波の気配を感じる。専門店も続々と増え、家庭でもこだわりを持って楽しむ人が増えている「お茶」が、ここにきて何やらホットなようだ。そんなお茶界隈におけるキーパーソンのひとりが長谷川愛さん。青山・国連大学前にて開催されるイベント「Tea For Peace」ディレクターをつとめ、自身がセレクトしたお茶をオーストラリアへ輸出するなどアクティブに活動。真摯にお茶に向き合いながら、ヒップな感覚でシーンのド真ん中を闊歩する彼女はなぜお茶に関わることを選んだのか。彼女のストーリーから紐解く、日本のお茶カルチャーの現在地。

—お茶のシーンの渦中にいらっしゃると思うのですが、長谷川さん自身、最近お茶が「きているな」という実感はありますか。

お茶専門店も確かに増えていますし、飲み方自体も多様化していますよね。ひとつはワインのリプレイス、ノンアルコールでも食事とのペアリングを楽しみたいときにお茶は最適。質感や味の余韻、フレーバーなんかはワインと共通するところも多いですよね。カジュアルなところだと、今までコーヒーが飲まれていた場面、たとえばさくっとスタンドとかで飲むような感覚でお茶を出す店もよく見かけます。

—たしかにお店が増えていることは、象徴的かもしれませんね。

一番裾野が広いところだと、タピオカドリンクに行列ができていることも、お茶のムーブメントのひとつじゃないかと思っていて。一種の「お茶」であることに間違いはないし、最近はお茶の品種まで選べたりしますよね。


—長谷川さん自身がお茶の仕事に携わるきっかけを教えてください。

もともと海外で働けたらという気持ちが強くて、学生時代にワーホリを使ってメルボルンで働いていて、そのときに目覚めたのが実はコーヒーなんです。いきなりお茶じゃなくてごめんなさい(笑)。帰国してからは名古屋の[TRUNK COFFEE]というカフェで働いていたんですけど、あるときエストニアにあるカフェで、ゲストバリスタとしてコーヒーを淹れることになったんですね。

—エストニアでゲストバリスタ、なんだか刺激が多そうですね。

予想外だったのが、コーヒーを淹れるために行ったのに最終的にすごいたくさん抹茶を点てる羽目になったんですよ。「日本人が抹茶を点ててくれることなんてないから」って。でもそのお店で提供していた抹茶が、ちょっと残念な感じだったというか。


—どのようなものだったのでしょうか。

少量の抹茶を、大量のお湯でジャバジャバやっちゃうのが彼らのスタンダードで。抹茶の品質自体もあまりいいものじゃなかった。これが日本のカルチャーとして受け取られるのはイヤだなと思ったんです。同時に思ったのが、もし海外でバリスタとしてやっていくとしたら、「お茶」について精通していることは、自分の武器になるんじゃないかと。

—そこからお茶の世界に入ってみようと。

お茶についてもっと勉強したいと思ったんですけど、どうすればいいのかはわからなくて。とりあえずお茶農家さんが集まる品評会が長崎であると聞いたので、農家さんと繋がって仲良くれば、畑に遊びにいけるんじゃないかと思い長崎へ向かいました。お金がなかったからヒッチハイクで(笑)。そこで出会ったお茶農家さんをはじめ、いろいろな畑を見に行く機会が増えていくうちに、どんどんお茶にハマっていきました。


—お茶の世界にのめりこんでいって、現在取り組まれているのが「Tea For Peace」というイベントだと思うのですが、一体どんなイベントなんですか。

一言で言うと大きなお茶会です。国内外でお茶を作っている人や、こだわりを持ってお茶を選んでいる人たちが集まります。そこで直接話を聞いたり、お茶を味わうことで、お茶の楽しみ方や面白さを発見することができる。お茶の定義も幅広いから、ハーブティーからスパイスティーまでいろいろな種類のものがラインナップします。



—他のお茶のイベントと違うところはどこでしょうか。

最大の特徴はオープンであることですかね。入場料や予約を事前にとって、クローズドにやるイベントは結構あるけど、まだそこまでお茶を飲んでいない人とか、ちょっとだけ興味がある人たちが、気軽にお茶を楽しめる場所ってあまりない。そうした人にとっての入り口にもなり得るからこそ、本当に良いと思う生産者さんやお茶屋さんに出ていただいています。同時にお茶ギークみたいな人にも楽しんでもらえる自信もあります。

—今度はどんな展開を見据えていますか。

もっといろいろな入り口を作れたらと思っていて、茶器をはじめとした器からのアプローチも増やしたい。あとはお茶のサブスクリプションを考えています。出店者さんをはじめ、毎月違う農家さんのお茶と、その農家さんに関するブックが届くようなことをしようかと。来年の春から運用予定です。


―個人的に今後挑戦していきたいことがあれば教えてください。

ミニマムで趣味レベルなのですが、最近自分で紅茶を作っています。色々な畑にお邪魔した際に、少しだけ生葉をわけてもらって自分で手摘みをして、2日くらいかけて揉んだり寝かせたりして発酵を進めて、香りが立ってきたらドライフルーツの乾燥機みたいなもので乾燥させるんですね。これが意外とカジュアルにできちゃう。いまはお茶会でしか出してないけど、少しずつ規模を大きくしていけたら。いつか小さなラボみたいなものをつくって、いろいろなお茶の楽しみ方を探求したりシェアできる場所をつくりたいです。


長谷川愛
バリスタを経て、青山国連大学前で毎週末行われているFarmer’s Market @ UNUや南青山[COMMUNE]などを運営するクリエイティブチーム、メディアサーフコミュニケーションズにジョイン。現在は青山・国連大学前で開催される、2万人以上を動員するお茶イベント「Tea For Peace」ディレクターを務めながら、 ポートランドのガイドブック「TRUE PORTLAND」制作に編集・ライターとして携わるなど精力的に活動。

Tea For Peace
(次回開催は2020年3月28日・29日)
https://www.tea-for-peace.com
Instagram: @tea_for_peace

Text: Shunpei Narita
Photography: Yoshimi Kikuchi

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