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ブルックリンのヴィーガンチーズ店「Dr-Cow」

―ベジタリアンとしてニューヨークで生活

私が牛肉を食べなくなったのが2003年に狂牛病のニュースが流れた頃。大好きだったタン塩が食べれなくなった代りに、給食のトラウマで子供の頃から大キライだった豚肉を食べ始めた。「えー、美味しいじゃんか!」。大人になるまで豚肉の美味しさを知らなくて慌てて食べ始めたが、2005年に今度は豚インフルエンザのニュースが流れた。それでパタリと肉食をやめた。誰かのコントロールで自分の食べたいものまで脅かされるんだったら最初から食べるのはやめようと、今も肉は口にしてないし、幸いまったく恋しくもない。

ベジタリアンのカテゴリーはいくつもあるけど、私の場合は野菜や豆類に卵に穀物を中心にたまにチーズや魚貝類を食べるけど、去年からミルクはナッツ系のミルクしか買わなくなった。ヘルスコンシャスな友人の多くがもう随分と牛乳は飲んでない。肉にしろ牛乳しろ生産の過程が見える生活をしていたら肌で良し悪しを感じられるけど、都会生活者の多くが”オーガニック”や”グラスフィード (草食)””Non-GMO(非遺伝子組換え食品)"とうたう商品ラベルの中からしか安全をチョイスできない。だからより地球と身体に負担の少ないプラントベース(植物由来の食事)に切り替えるのは体に対する美味しい安全策ではあると思う。


―牛乳を使わないナッツミルクから精製したチーズ

ブルックリンをベースにする「Dr-Cow」はアルゼンチン出身のパブロ・カストロとヴェロニカ・ シュワルツ夫妻によるピュアでスタイリッシュなヴィーガン&ローフード(生食)のブランド。パブロはプロデュースに営業や配達まで担当し、元フレンチパティシエだったヴェロニカが作る摂氏49度までしか加熱しないローフードのメソッド(※)を通して作られたチョコレートは乳製品を一切使わず、カシュークリームやココナッツを使ったキイライムパイはヴィーガンとはいえクリーミーで最高に美味しいケーキでしかない。その美味しさはミルクよりもミルキーでチーズのようにチージィーだ。

※=重要な栄養素と酵素は華氏約120度=摂氏49度で分解し始めるという。


そしてDr-Cowの真骨頂といえば、「オルタナティブ・ノンデイリー(非乳飲料)・チーズ」と言われるカシューミルクをベースにしたナッツチーズ。 ヴィーガン、卵不使用、グルテンフリー、大豆フリー(そう、アメリカのヘルスコンシャスな人は納豆、味噌、テンペなどの発酵させた大豆は食すが、それ以外は身体に害があると豆腐や豆乳を避けている人が多い)。使う原材料はもちろんオーガニックでNon-GMO、どの材料にも目が行き届いたクリーンで理にかなった彼らの食べ物に対するフィロソフィーは地球の環境と私たちの健康に優しい。


―プロセスを楽しみながら街中に届けるメッセージ

ふたりとも10代の頃からべジタリアンとして生活してきたが、ニューヨークに移り住んだ2003年に偶然ローフードのプライベートシェフの仕事をすることになり、当時手に入るローフードのダイエットに関する本をすべて読みあさり、これは理にかなった食生活だと自分たちの生活にも取り入れるようになった。「70年代からローフードを実践していた人たちがいて、発酵させたナッツクリームは当時からあったけど、ユニークでもっと洗練されたナッツチーズを作りたくて、1年丸々試行錯誤でリサーチとエラーを重ねて研究したの」とヴェロニカ。

2007年にウィリアムズバーグにキッチンを作り、現在は6種のセミハードチーズと3種のクリームチーズが製品として、ヘルスフードストアやトレンディーなレストランやカフェに卸しているほどDr-Cowの商品を街で目にすることが多いが、今だにウィリアムズバーグの キッチンにいるヴェロニカによってすべて作られている。

「私たちは毎日ここで働いているけどこの仕事は本当に楽しいわ。私たちはチーズやチョコレートづくりのプロセスが大好きだし、自分たちの手に届く継続可能なビジネスでありたいと思っている。私たちが作るものが誰かの体に入るのを知っているからそこに最高なエナジーを込めたい。利益を考えるよりも、この仕事は個人的なメッセージのようなものなの」

クリームチーズは本物のそれよりクリーミー、セミハードは鼻にくる(それがチーズの好きなとこだけど)乳製品のチーズのとはまた違うが、発酵したナッツが生みだす濃厚な旨味はチーズを食べた時と同じ幸福感だ。


現在は同地にショップもオープンし、まさにチーズショップ的にディスプレイされた、レイヤーが美しいコンブやチャコール、ケールやヘンプ、ミネラルの塊りのシラジットや霊芝などの漢方を取り入れたユニークなフレイバーのチーズ、カシューミルクにココナッツヨーグルト、そしてチョコレートやケーキにグラノーラも並ぶ。そのどれもが美しい自然のレイヤーでとても創造的で実験的。ノンヴェジタリアンにとっても魅力的な世界なのでニューヨークにいらした際は是非立ち寄って欲しい。

TEXT: 工藤キキ
PHOTO: 工藤キキ

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