search search

表現者・SARMの歌と言葉が描き出す未来図

ひとつの界隈には居たくない もっと世界観を固めたい もっと自分を知りたい

一度聴いたら忘れられない、特徴的なヴィンテージボイスで人々を魅了するシンガーソングライター・SARM。今年の1月にリリースされた初のEP「I don't wanna do」が注目を集める。彼女のバックボーンを解き明かすことで見えてきたのは、シンガーという枠に固執しない、一表現者としての姿勢だった。

―いきなりですけど、すごくいい声ですよね。

でも、小さい頃はこの声がコンプレックスで。周りの女の子の声は高くてかわいらしいのに、なんで自分だけ低いんやろって。それでも私はずっと歌ってて、高校生のときに廊下で歌ってたら、友達に「そんなに歌うの好きなら歌手になったらいいんちゃうん?」って言われて、「あ、なるほど」って。

―「ずっと歌ってた」というのは?

授業中にも本当に無意識で歌ってて、先生から「うるさい!」って言われて初めて自分が歌ってたことに気づくっていう。


―ちょっとした問題児ですね(笑)。どんな子供だったんですか。

小さい頃は絵ばっか描いてたので「絵描きになれたらな」と思ってて。音楽はまったくやってなかったです。

―では高校生のときに歌おうと決めてからいろんな人の曲を聴き始めたんですね。そして、ジャニス・ジョプリンの歌に出会ったと。

そうです。ライブバーで歌ってた頃、お店のオーナーにジャニス・ジョプリンの『Summertime』のライブ映像を見せられたんですよ。それを見て、「ヤバっ!」って。歌が上手いとかそういう次元を超えて、彼女のリアルな気持ち、魂に衝撃を受けて。ただの映像であんなに刺さる感覚は初めてでした。


―自分の声や歌に対して意識的になったきっかけはありますか。

意識的になる以前にもう、歌うとこの声なんですよ。中学生ぐらいの頃、アニメ「忍たま乱太郎」の『100%勇気』を歌ってたら、友達から「なんでそんな歌い方になんの!?」って言われて。今、そのときのことを思い返してみると、多分、すごくブラックミュージックなノリで歌ってたと思うんですよね(笑)。

―自然とそういうグルーヴが身についていたと。

最近になってから、人から「ブラックミュージックだね」って言われるようになって、ウチはそこに特化して音楽を聴いてきたわけじゃないから、「そうなんだあ」って思ってました。


―たしかに、SARMさんのボーカルは特定のジャンルに留まってはいないですよね。ロックとか歌謡曲とか幅広いジャンルにも対応できそう。ドラムンベースのロニ・サイズも好きみたいですし。

「こういうふうに歌いたい」っていう意識はありますけど、トラックに関してジャンル的なこだわりはないですね。昔からユーロビートも聴くし、歌謡曲も聴くし。

―SARMさんのルーツは何ですか。

歌はジャズとブルースですけど、トラックはダンスミュージックに惹かれることが多いのかなあ。ドラムンベースも好きだし、トランスとかテクノも聴いてたし、EDMが流行ったときにも聴いてたし。

―今年1月にリリースされた初のEP「I don't wanna do」も型にはまってないですよね。

でも、ひとつ決めてることがあって。ウチは新しいことをやりたいんですよ。「これとこれを掛け合わせたら面白くなるかなあ」っていう感覚でいつも曲をつくってます。


―トラックメイカーにはいつもどういう注文をしているんですか。

ビート感とかメロディや展開を決めた状態で、「こういうコードでやろうか」っていう話をします。例えば、『Muscari』(「I don't wanna do」収録)だったら、歌詞に出てくる<ディディンダ>っていう言葉は雨の音を表現しているので、トラックも雨が降ってるような音にしたいって伝えたり、そういう感じです。


―歌詞に関してはいかがでしょう。

小さい頃に絵を描いてたとき、実は文章も書いてたんですよ。絵本とか小説みたいな。あとはちょっとした詞も書いたりしてたから、そういうのを曲に乗せたり。


―歌と曲と詞、どちらを褒められるのが一番うれしいですか。

え……! 選べへんなあ……。でも、全部が自分だし、どれを褒められても自分だから……。

―なるほど。『I don't wanna do』のMVで見せるSARMさんの演技を観てても思ったんですが、SARMさんは肩書こそシンガーソングライターですけど、“表現者”って呼ぶほうがしっくりきますね。

あ、そうですね。歌うことも自分の表現のうちのひとつだし、絵も描きたいし、全部が自分を表現する手段って感じです。いつかMVも自分でディレクションしたいと思ってます。

―自分というものを表現できるフォーマットであれば何にでも挑戦していきたいんでしょうね。

おお~、そうかもしれないです。自分の感情が昂ぶったら歌詞を書くし、映画を観てるときにブワッと何かが浮かんできたら絵を描くし、インプットに対して何かを表現するっていう感じ。だから、もし歌をやってなかったとしたら、文章とか別の表現をしてたかもしれないし、歌よりも映像のほうが早く出会ってたらそっちをやってたかもしれない。


―ああ、それは面白いですね。今回、初めてEPをつくってみていかがですか。

やっと制作のコツが掴めてきたかも。前は自分のなかにあるイメージをうまく言葉で説明できなかったりしたせいで制作にめっちゃ時間がかかってたんですけど、EPでは自分のイメージをそのまま形にできたので、今は制作が楽しいですね。

―もっといろんなジャンルのミュージシャンやリスナーに見つかってほしいです。

ひとつの界隈には居たくないですね。今後はロックとかJ-POPの要素も入れていきたいと思ってるし。あとは自分の世界観をもっと固めていきたいです。もっと自分を知りたい。そうすることで自分の歌にもっと説得力が出ると思ってます。


SARM

独特のヴィンテージボイスとパワフルなライブパフォーマンスで魅了するシンガーソングライター。自らの歌のルーツであるJazz、Blues、Soulを活かし、最新の音楽と融合させる新しい音楽スタイルを確立し、音楽メディアから注目を集めている。国内に留まらず海外でも活動し、台湾や香港、タイ、オーストラリアでのライブでも観客を沸かした。

Instagram: @xxsarm
www.sarm.jp
www.tunecore.co.jp/artist/xxsarm

Text: Daishi “DA” Ato
Photo: Eisuke Asaoka
Produce: Kenta Suzuki

Location:
SOUL SISTERS
東京都渋谷区恵比寿1-4-5

SHARE