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ケンゴマツモトの酒と嗜むプレイリスト<邦楽編>

酒と音楽を誰よりも愛する酔いどれギタリスト、THE NOVEMBERSのケンゴマツモトが、酒を飲みながら聴くのにぴったりなプレイリストを選曲してくれた。こちらは邦楽編。無類の読書家でもある彼らしく、歌詞を引用した私小説のようなポエティックな解説を読みながら、一緒にグラスを傾けてみてはどうだろう?


“午前3時の街角で” by SION
「いつまでも自分の頭ばっか なでてられない / あの車が行ったら この道渡りきろ」ここで焼酎甲類を一気飲みしながら泣く。泣きながら色々反省する。10年前の今頃毎日聞いていたな。自分の頭ばかりを撫でていたよな。



“シカゴ・バウンド” by 憂歌団
「仕事をやって 金をためて / ピストル買うんだ / ピストル買って 頭めがけ / ぶちぬこうと思ったけど / 仕事もなけりゃ ピストルも買えねェ / これから先は まっ暗やみさ」どうしようもなく金がない時代によく聞いていた。主に小瓶の安いウィスキーを飲みピストルで頭をぶち抜きてえなと思いながら。世界がクソだと呪いながら。いうまでもなく一番クソッタレなのは自身だったのだが。




“どうしようもない恋の唄” by THE ROOSTERS
「あの娘の体 思い出して/ 一人であれを」こんなにどうしようもないラブソングは中々ない。大江慎也の歌詞はなんでこんなにどうしようもなくてシンプルで切なくて知的なんだろうか。と思いながら芋焼酎を浴びる。頭から。爪先まで。



“生活の柄” by 高田渡
「草に埋もれて寝たのです」俺は酔っ払ってビルとビルの間に埋もれて寝たことがある。昔はビールを8リットルくらい飲んでいた。今じゃこのザマだ。年を取るって事は本当に馬鹿げてる。生きてるっていう事は本当どうしようもない。と嘯き、あははと笑いながら焼酎梅割りを飲む。吉祥寺の立ち飲みで。震える手で。震える心で。



“私たちの望むものは” by 岡林信康
阿部芙蓉美バージョンも素晴らしい。「私たちの望むものは / あなたと生きることではなく / 私たちの望むものは / あなたを殺すことなのだ」かつて俺にもそう思ってる年頃があった。ぶっ殺してやる。ぶっ壊してやる。無茶苦茶にしてやると。このクソ世界に抵抗すべく、復讐すべく、そしてむしろテロリストにならないために、小さく震えながらステージで大暴れをしていた。思えばそういう事から始まったんだな。あの頃の自分に会うことがあったら間違い無くぶん殴る。ムカつくガキだから。という事を思い出しながらレモン焼酎という明らかに密造された酒を飲みながら椅子あるいはスツールから転げ落ちる。




“三上工務店が歩く” by 三上寛
まずタイトルを読むだけで軽く10杯は飲める。最初のサビの「三上工務店が濡れる!!」のシャウトで10杯は飲める。二回目のサビの「三上工務店が揺れる!!」でもう10杯飲める。最後のフェードアウトとラッパのエモーションでもう帰りたくなる。そして「三上工務店が歩く」という歌詞が出てこないという事実でもう20杯飲める。




“未来は俺等の手の中” by THA BLUE HERB
日常的に聞く音楽はもうブルーハーブだけでいい。そう思う瞬間が多々ある。「終わらないものはないが 変わらないものは果たしてあるのか? / ゆっくりとすこしづつ失いながら それぞれの安らぎと生きてる / だがまだ行くな 少なくともまだある / たっぷりある」変わらないものはあるのか? 俺たちはある日突然生まれてきて、少しずつ揺れながら形を変えて、ある日突然ふっとロウソクの火が消えるように消えてしまう。でも、まだあるよな。まだあるからな。というような暑苦しいことを考えながらシャンパンの風呂に浸かる。体がベタベタになる。隈なく。



“男は行く” by エレファントカシマシ
もし可能なら、まずプロモーションビデオを見て欲しい。雑踏でチンピラが佇んでるだけの狂気の5分弱。「豚に真珠だ貴様らに/ 聞かせる歌などなくなった」この頃の宮本浩次に自身を重ね、また励まされ、また陶酔し、結果色んなものをこじらせた大人になってしまった人間は恐らく沢山いるが、多分にもれずオイラもそうだぜ。悪いな。じゃあな。という感じで日本酒を飲む。常温で飲む。男は飲む。




“青春狂走曲” by サニーデイサービス
「そっちはどうだい うまくやってるかい / こっちはこうさ どうにもならんよ / 今んとこはまあ そんな感じなんだ」思えばずっとそういう状態である。ずっとどうにもならんよという状態である。そして恐らく死ぬまでまあそんな感じなんだという気すらしてる。ま、いっかって感じである。へへって感じ。へへって言いながらベルモットを赤と白ハーフで飲む。へへっ。



“ダニー・ゴー” by THEE MICHELLE GUN ELEPHANT
俺は15歳だった。柔道をやってるから坊主だった。中高一貫の男子校だった。迎と池上と宇治という奴らとバンドをやっていた。相変わらず俺にとって世界はカスのカスで、ミッシェルガンエレファントとブランキージェットシティとエレファントカシマシの新譜だけが楽しみだった。「振り返らず 錆びた風は続くだろう」ギヤ・ブルーズの店着日にCD屋に赴きポータブルのプレイヤーにぶち込み音量をマックスにしてドキドキしながら聞いたアルバムの最後を飾るのこの曲で松本少年は泣いた。この曲に浸りたいがために、何回も聞きたいがために、家の周りをグルグル歩きながら聞いた。俺、振り返らねえ、とか思いながら。今だって、俺がやってる事やお前らがやってる事はあの頃と大して変わらないかもしれない気もするし、同時にあの頃とは全てが変わってしまった気もする。ただ、一つだけ確かな事は、かつて鬼と呼ばれたギタリストが、もうこの世に居ないという事だ。俺はその事実が、とても寂しいよ、鬼。アイミスユー、鬼。という事を考えながらレモンサワーをガブガブ飲む。何ガロンも飲む。っていうか店ごと飲む。



TEXT: Takanori Kuroda
PHOTO:Shun Aihara

ケンゴマツモト (THE NOVEMBERS)

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