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思い出野郎Aチーム 高橋一が音楽で明かす「夜」


パーティーソングだけ歌ってはいられない世の中で、ソウルバンドが目指す夜明け

美術大学のジャズ研から生まれた8人組のソウルバンド 思い出野郎Aチームが、この夏に結成10周年を迎えた。「週末はソウルバンド」「ダンスに間に合う」「Magic Number」などおすすめすべき曲は多いが、ファンクやソウルという音楽が元来持つ気骨のあるメッセージと、それが押し付けではなく音とダンスという最高に楽しい昇華を生む彼らの楽曲には、リスナーのみならずミュージシャンの心も鷲掴みにする力がある。アニバーサリーイヤーの今年、毎月の対バンイベントやFUJI ROCKへの出演、そして渾身の3rdアルバム『Share the Light』をリリースする思い出野郎Aチーム、フロントマンの高橋一にインタビューを行なった。


—今年は1月から毎月の対バンイベント「ウルトラソウルピクニック」をはじめ各地のライブと動き回っています。FUJI ROCK ‘19にも4年ぶりのご出演でしたね。ライブをやるごとに高まっている感じとかはありますか。

そうですね。前よりはいろいろ楽しめてはいるかなと思うんですけど。でも結局必死というか、変わったような変わらないような。ただ、やっぱり演奏に求める理想というか、自分たちの中でのハードルは高くなったから、その分悩むことの質はよくなっているというか。それはいいことかなと思います。


—ライブ後はいつもみなさんで打ち上げされるんですか?

結構しますね。フジロックとかは初日の昼だったので、ひたすらもう飲んで(笑)。ライブ観にいって、雨降ってきたらホテルに帰って、ただ飲んで(笑)。


—でも打ち上げの時も結構ちゃんと反省点は言ったり。

結構深刻になり過ぎて、悪い酒になることもあったりします。先に反省を済ませてから飲みにいけばあまり引きずらずに飲めるということをだんだん学んできましたけど(笑)。


—新作が完成しましたが、レコーディングのとき一番こだわるのはどういう部分なんですか。

やっぱり、一番優先するのは本当にナチュラルに体が動くかっていうことで、結構みんなで大きい音で聴いて判断しますね。演奏的にはうまくできたテイクはもっとあるけど、「こっちの方が何かノリが出てるんじゃない?」みたいな。ノリってすごくあいまいな言葉で、もっとうまいバンドからしたら明確なものもあると思うんですけど、我々なりの長年やってきたもの、呼吸が合っている気がするみたいなことをやっぱり一番優先はしますね。今でもライブとか練習後はみんなで飲むし、聴いてる音楽とかをさんざん共有してきているので、そのかけらみたいなものが少しでも入っているかどうかでテイクは選ぶというか。「これによってあのレコードのノリが1ミリだけ出せたかもね」みたいなのはちょっとこだわるというか。


—みなさんのインプットを共有して、その蓄積が10年あってというところで、言葉にはできない部分のチューニングみたいなところもできてきていると。

そうですね。ユアソンのJxJxさん(YOUR SONG IS GOODのサイトウ "JxJx" ジュン)の言葉なんですけど、バイブスの調整、「バイ調」が10年でだいぶなされてきているのかなと。


—多摩美術大学のジャズ研の仲間で結成して、それぞれ仕事と並行しながら活動をして今年8月で10周年ですね。みなさん、今も日中働かれているという生活ですか。

基本的には働いているんですけど、家で仕事したりとか短期バイトやったりとか、以前よりは無職に近いメンバーも増えて、だんだん訳が分からない集団にはなってきています(笑)。僕も前はがっつりフルタイムで働いていたんですけど、最近は家で作業できる余裕も出てきて、週の半分ぐらいは自宅でデモつくる作業をしていて。それも今回よかったかなとは思っています。歌詞とかも家でじっくり書けたので。


—働いている人を勇気づける歌みたいなところがありますよね。“ダンスには間に合う 散々な日でも ひどい気分でも”(「ダンスに間に合う」のサビ)とかもそうだと思いますし。

そう。意識しているわけではないんですけど、割と普通に日々のことを歌にしがちなので、自然とそうなる。柄じゃないことはしないという感じなので、そこはナチュラルにというか。


—だから共感を呼ぶんだと思います。それでいうと今作は、少し広がった印象がありました。「分けあおう」というところに、一歩踏み込んだのかなという。

今回も2nd(アルバム『夜のすべて』)のときも、「夜」というワードが多いんですけど、言葉の扱い方が違っていて。前回はただ普通に、「昼間働いていて夜が来た」という直接的意味での夜の歌が多かった。夜というのは遊びにいく時間だし、何か楽しいことをする時間という使い方が多かったんですけど、今回はもう少し比喩的な意味での夜というか。やっぱり今、社会が夜を迎えていると俺は思っているんですね。すごく暗いことやいろんなことがあって、分断もあるし、ヘイトの問題とか、日本もだいぶ大変なことになっているので。そういう「夜」を越えようとか明かそうみたいな意味もあります。この時代を夜と喩えて、もう少しみんなで力を合わせて、越えていけたらいいんじゃないのという感じで。



—本作1曲目が「同じ夜を鳴らす」という曲で、何かみんなで同じ夜に向かっている、と悲観的でも扇動的でもなく歩み寄る感じからスタートしますね。

メッセージとして、ただ「暗い」とか「ダメだ」というよりも、「Share」という言葉を最初から使おうとは思っていて。どう使おうかすごく悩んだんですけど、ただ嘆くとか逃避するというよりは、もう少し分かち合って、助け合ってみたいなことをテーマにしたいなというのがあったので、それで『Share the Light』というタイトルにしましたね。ぶっちゃけそういうのは入れない方が売れるんですよね。やっぱり反発もあるし。ただ、あまりに今、そういうものを作品にして形として残すタイプの音楽が少ないかなと思ったので。そういう作品がまだ出せるんだよとか、そういう人がいるよというのは、前例をつくるという意味で大事かなとか思ったりして。本当は楽しいバーティーソングだけやっていたい。ただ、世の中がそうじゃないんだから、やるしかないというか。早くパーティーソングだけ歌わせてほしいなという感じです。


—社会を意識しての音楽というのはソウルミュージックの根源のような気もします。ジェームズ・ブラウンは公民権運動で民衆が荒れているときに「そういう暴力的なことをするな、俺のライブを見ろ」と言ったとか。思い出野郎Aチームには似た部分を感じます。

JBは神のようなカリスマですけど、僕らはそういうタイプでもないので、一人の救世主みたいに言うというよりは、タイトルのように、「みんなで一緒にシェアしようよ」という感じというか。


—なるほど。今年1月から毎月行なっている対バンイベント「ウルトラソウルピクニック」ではさまざまなミュージシャンと対バンをしていますが、多くの刺激を受けているのではないでしょうか。

ユアソンから始まって、もう本当に手練れの人たちばかりで毎回すごかったんですけど、個人的にすごく印象に残っているのは、7月のKODAMA AND THE DUB STATION BANDのツーマンはマジで……。こだまさんがライブでよくカバーして歌っているJAGATARAの「もう我慢できない」という名曲があるんですけど、最近の社会が抱え続ける差別とか表現の自由とか様々な問題にもダイレクトに響くというか、本当にそうだなと思って。でも、何十年も前の曲なのにそのメッセージが今の社会に対しても機能し続けているというのは、ある意味問題を改善できてない俺たちの責任だとも思ったし、一方で強いメッセージを持った曲が普遍的に今も魅力を失わないで響いているのを間近で聴けて、これから続けるための勇気をもらったなという感じがしました。


思い出野郎Aチーム
2009年の夏、多摩美術大学にて結成された8人組のソウルバンド。2015年、mabanuaプロデュースによる1stアルバム『WEEKEND SOUL BAND』を、2017年に2ndアルバム『夜のすべて』、2018年には初のEP『楽しく暮らそう』をリリース。そして2019年9月18日、待望の3rdアルバム『Share the Light』をリリース。
Negicco、lyrical school、NHKの子供番組「シャキーン!」への楽曲提供、ドラマ「デザイナー 渋井直人の休日」のオープニングテーマ担当や、キングオブコント2018王者のハナコの単独ライブにジングルと、エンディングテーマ「繋がったミュージック」を提供、メンバーそれぞれがDJ活動を行うなど、多岐にわたって精力的な活動をしている。

https://oyat.jp/

Interview & Text: Yoshiki Tatezaki
Photo: Eisuke Asaoka

Location:
music bar 45
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