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THE KLFが卯城竜太に与える刺激

国内パンクの最高峰として、ハナタラシの「Omocha No Cha Cha Cha」を紹介してくれたChim↑Pomの卯城竜太。「では、海外ではどうか?」との質問に彼が答えたのが、1980年代から90年代初頭にかけて、イギリスの音楽シーンとアートシーンを騒がせた伝説的な音楽ユニット「THE KLF」だ。とはいえ、卯城が注目するのはその音楽性というより、彼らが数々の問題行動を通して行った社会に対しての批評であり、そこに浮かび上がる表現者の系譜のようだ。

「The JAMs」名義で活動を始めたTHE KLFは、ビル・ドラモンドとジミー・コーティの二人組ユニット。ときにヒットチャートを賑わす人気ユニットだった彼らは、一方で「著作権解放戦線」を意味すると言われる名前のとおり、ほかのアーティストの楽曲を無断サンプリングするなど、挑発的な行為でさまざまな物議を醸した。

とくに、アルバム『1987 (What the Fuck Is Going On?)』に収録された「The Queen And I」では、スウェーデンのポップユニット・ABBAの世界的ヒット曲「ダンシング・クイーン」を無許可で使用。ABBA側の抗議を受けると、彼らを説得しようとスウェーデンに向かい、それでも拒否されたため、彼らの事務所前で曲を大音量で流したり、大量のレコードを燃やしたりしたという逸話は有名だ。


「はっきり言って、彼らの音楽にはぜんぜん惹かれない(笑)。だからKLFを聴いたのなんて人生で一度だけ。俺にとっちゃ聴くもんじゃないんだよね。なのに、知的好奇心を1番くすぐられたのはこのバンド。めっちゃ売れて人気者になった自分たちを皮肉るように音楽で売れるための方法を説く本を出したり、なんていうかウォーホルとかにも言えるけど、人々の熱狂や好奇心を鼻で笑ってるんですよ、彼らは(笑)」と、卯城はTHE KLFの魅力を語る。

さらにTHE KLFは、世界的なアートのアワード「ターナー賞」に対抗して、くだらないアート作品に賞金を与える「K・ファウンデーション」という活動を、メディアを利用しつつ展開もした。音楽の収益で得た莫大な資金をベースにやりたい放題。2千万円もの金を燃やしてしまったというエピソードもある。

卯城にとってTHE KLFの面白さとは、「イギリスで、こうしたカルチャー・ジャミング(既存のメディアの手法を利用した消費社会への批判)的な活動を、アンダーグラウンドではなく圧倒的なメインストリームでやったポップ性」にあるという。さらに、「THE KLFがいなければ、バンクシーも出てこなかったかもしれない」とも話す。バンクシーは、世界中のストリートで社会批評的なグラフィティ活動を展開する現代の人気アーティストだが、どういうことだろうか。

「そうした過激な社会批評を、アンダーグラウンドな世界でやるのは簡単なわけじゃん? THE KLFのすごさは、それを表の世界でやったこと。これは遡れば、1970年代にマルコム・マクラーレンが、セックス・ピストルズやヴィヴィアン・ウエストウッドを通してやったことにもつながる。70年代のマクラーレン、80~90年代のTHE KLFという風に継承されてきた世界観を、公共のビジュアルに置き換えたのが現代のバンクシーだってのはよく言われているんだよね」。

自身が好きだったマクラーレンから、同時代のアーティストであるバンクシーをつなぐ中間地点として、THE KLFの活動は卯城にも大きな刺激を与えているようだ。


TEXT: 杉原環樹
PHOTO: 菊池良助

卯城竜太(Chim↑Pom)

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