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意外な音色を奏でる、アーティスティックな電子楽器たち

新しい楽器をつくるということは、ときによって新しい音楽をつくりだす。たとえばエレキギターがロックンロールを生み、Roland社のTB-303がアシッド・ハウスを生んだように、これまでにない響きを持った楽器はひとつのジャンルを生みさえする。今回紹介するのは、Ciat-LonbardeとFolktekというアメリカの2つのメーカーが制作する電子楽器だ。ロックンロールやアシッド・ハウスほどのムーブメントとは無縁ではあれど、唯一無二の音をつくりだすことで音楽家のイマジネーションを刺激する、アーティスティックなこだわりに満ちている。


手作りのおもちゃのような電子楽器

Ciat-Lonbardeは、シカゴを拠点とするPeter Blasserによって作られた楽器メーカーだ。Blasserは1996年頃からリュートやギターといった楽器の制作を始め、2000年前後から電子楽器の制作に着手。そして、moogと並んで名機と讃えられるBuchlaシリーズを手掛けたことで知られる、シンセサイザーの名匠Don Buchlaの元で、2001年から一年間修行した経験も持つ。彼のつくる楽器の筐体はすべて地元で伐採される木材で統一されており、色鮮やかなパーツとのコンビネーションもあいまって、どこか手作りのおもちゃのような親しみやすさを備えている。




Sidrax Organ / Tetrax Organは、つまみやスライダーのついた細長い木のバーが木琴のように並べられた楽器だ。それぞれのバーに触れ、押し込んだり離したりすることで音を出す。バーを押下する強さにとても敏感に反応して発音するため、弦楽器のような微細なニュアンスのある音を鳴らすことができる。つまみやスライダーは、チューニングのためのものだ。バーのあいだにはたくさんのジャックが用意され、パッチケーブルを使って自由に結線し、音色をさまざまに変化させることができる。




もうひとつ演奏方法という観点からユニークなのは、Tocanteだ。目を引くのは、細長い木の筐体の表面に張り巡らされた、幾何学的な紋様。実は、この紋様に触れたり、息を吹きかけたりすることで、キーボードやフルートのように演奏することができるのだ。演奏方法次第でTocanteは、ビビッドな電子音にも荒々しい風の声のようにも響く。




ほか、Plumbutterのように複数のモジュールを持つセミモジュラータイプの楽器では、つまみやスイッチ、ジャックのレイアウトに都市風景のモチーフを用いたり、コンセプチュアルな遊びの要素が随所に見られる。紙幅の関係で紹介しきれないが、ほかにもCiat-Lonbardeの楽器には興味深いコンセプトがたくさん潜んでいる。サウンドにおいてもビジュアルにおいても、Ciat-Lonbardeの楽器は好奇心をくすぐってやまない。

Folktekの楽器たち

ポートランド出身の2人のアーティスト、Arius BlazeとBen Houstonによって2004年から始まった総合的なアートユニット、Folktek。現在は、Drew McIntyreを含めた3人が主要なメンバーであるようだ。彼らもまた、ユニークな電子楽器を数多く開発し、発表してきた。Ciat-Lonbardeの楽器がどこか親しみやすい雰囲気をまとっていたのに対して、Folktekの楽器はミニマルな装いに落ち着いた色調が印象的な、エレガントな雰囲気を醸し出している。




Symbioticは、タッチインターフェイスを使ったシンセサイザーのシリーズだ。六角形を敷き詰めたかたちのタッチパッドや、黒を基調とし、銀もしくは銅のカラーリングを施されたスマートなフロントパネルのレイアウトに、彼ららしい美意識が垣間見える。なかでもMescalineは高い拡張性と秀逸なデザインを持つ、とても美しい楽器だ。




また、Insectanシリーズは、筐体から飛び出た触手のようなケーブルをマグネットの力で結線する、ユニークなインターフェイスが特徴だ。その姿は『風の谷のナウシカ』に出てくる王蟲をすこし連想させる。




数ある楽器のなかでも、彼らが自ら「最も甘美な響きを持つFolktekの作品」と呼ぶのが、Electrocousticシリーズのluminist gardenだ。エレクトロニクスとアコースティックを組み合わせた造語であるこの名前が示唆するように、このシリーズではアコースティックな音源を電子的に変調させることでユニークなサウンドをつくりだす。luminist gardenで音源として用いられるのは、筐体の上につくられたフィールドだ。フィールドに生えているワイヤーやフィールドそのものを叩いたり、弾いたり擦ったりして生じるノイズが、内蔵のディレイユニットやリバーブを通じて変調され、独特のサウンドが生まれる。ディレイやリバーブのかけぐあい、フィールドの演奏具合によって、パーカッシブな音からドローンまで多彩な音色を奏でる。

Folktekの楽器は、誰も見たことがない洗練された新しさを感じさせる一方で、レトロなスイッチやライトといったディテイルへのこだわりもあって、どこかアンティークの古道具を思わせるところもある。彼らが自分たちの楽器を「過去のリミックスであり、現在のリミックスでもある」と呼ぶのもうなずける話だ。

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