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YOUR ROMANCEが語る、夜と人との距離

骨太なプレイスタイルから生まれるきらめきのあるポップスと、魅力的なツインボーカルの融合が光る東京発の4人組バンド・YOUR ROMANCE。

彼らの奏でる音楽には80年代ポップスのようなノスタルジーが滲みつつ、しかし、しっかりと「今」を駆ける瑞々しいものであることは間違いない。ロックサウンドに結ばれる幽玄的なシンセの音像、時空をゆらゆらと行き来するような、そんな彼らの音楽が生まれるのは、たいてい「深夜」だと言う。

YOUR ROMANCEの音楽がなぜこんなにも郷愁を誘い、エモーショナルなのか、「深夜」というキーワードを端に、その源流を探った。



「なんで深夜に制作するかっていうと、静かで暗くて時間感覚がなくなって……みんな寝てるから、一人だけ起きてるとめちゃくちゃ興奮するんですよね」(Shinji)

「わかる。深夜って“正気じゃない”からかな。昼間ってみんな正気だと思うんですよね。昼間は秩序を保つために社会的でまともな人間に近づいてるけど、夜のほうがちょっと無秩序というか」(inui)

「僕は普通に夜眠くなる。でも、だからこそ2人の言う、深夜は冷静じゃない、興奮するっていうのもすごくわかります。周りの何事にも干渉せず、干渉されずにすむ時間だからアイデアも生まれやすい」(Shun)

「僕も夜そんな強くないけど、ベッドに入ってもなんだか眠れずにいるときに曲が思いついて、そのまま1曲できちゃったりしますね」(Shissy)


深夜特有のアドレナリンの放出のされ方や、まどろみの中でふわっと考えが生まれてくる感覚。夜の特別感は誰しも体験したことがあるだろう。ただ、バンドとは別に仕事を持ちながら音楽活動を続ける彼らは、生活の基軸はあくまで「昼」なはず。たとえば、仕事がオフの日、昼間は制作しないのか尋ねると、意外な答えが返ってきた。

「昼間みんなが普通に外で働いていたり、学校に行っている時間帯に、家にいて制作してると、“世捨て感”を感じるんですよね。自分が世捨て人って認識するのは嫌だな。だから、単純な作業なら昼間でもいいんだけど、自由な創作に関しては深夜だと、“世捨て感”を感じなくていいんですよね」(Shinji)

「バンド活動自体が、世捨ての最たるものだと思っていて。だから世の中のことは見ていながらも、ある程度世の中と離れたところにいたほうが、芸術的なものが生まれやすいと思います」(Shinji)

YOUR ROMANCE / Kids

“世捨て感”は感じたくない、でも、日常と少し離れたところで制作をする、世の中とのそんな距離感がYOUR ROMANCEのドリーミーで、だけどとても肉体的なサウンドの根底にあるのかもしれない。そのバランス感覚はどこからくるのだろうか。

「もちろん音楽そのものの価値が高いものは大好き。ただ、音楽的な価値は高くなくても、演奏してる人、作ってる人の魅力が反映されている音楽には愛おしさがある」(Shinji)

「やっぱり人間性が垣間見える有機的なものが好きなんです。すごく優れているんだけどエモーションがあまり感じられないというか、無機的なものがあんまり好きじゃないって思って。

たとえば失恋の歌詞でメロディーも悲しい感じなのに、作っている人の顔がめっちゃ真顔みたいな、乖離している感じはあんまり響かない。自分の主観でしかないけど、そういう感覚っていうのは音楽を聴くとわかる気がします」(inui)


「音楽そのものの価値ももちろん大事だと思うけど、音楽的な価値はそんなに高くなくても、演奏してる人、作ってる人の魅力が反映されてるほうが愛おしいんですよね」(Shinji)

街も眠る「深夜」という非日常から刺激されつつも、その根底にはいつも「人」の温度が存在している。その人が生み出した作品を通して、それぞれの人間性や感情に丁寧に触れようとする彼ら自身は、どういう心持ちで音楽に触れているのだろう。プロとして「嫌なやつにならなきゃいけない瞬間もあると思う」と語るShinjiは「でも」と続ける。

「でも、僕たちは人が好きっていうのが大前提にあるから、人の気持ちを無視した音楽活動はフィットしない。だから、関わっている誰かが悲しんだり損をしたときに、本当にそれでいいのか、立ち止まって考えることがある。その思考自体はすごく無駄だし、プロフェッショナルではない感覚だと思う。

ただ、自分自身も含め、関わっている人たちがストレスを抱えながら生活する、制作するっていうのは、このバンドにとってはすごく不健康なことだから、 “世捨て感”がない程度に世の中と距離をとって、“人”を優先した上で制作するのが僕たちのスタイルなんです。甘ちゃんって思われるかもしれないけど、そのポリシーを変えて作った音楽には誰も愛情を注げないと思う」(Shinji)


「人ありきでバンドが成り立っているし、バンドによって僕たちの好きな音楽が成り立っているし」(inui)

「音楽以外、崇高な趣味やこだわりはないけど、人付き合いはちゃんとしようよって。だから先輩も後輩もいっぱいいるんです。それは俺らの唯一の財産です」(Shinji)

世の中や人への優しさと興味、その心地よい距離感が、YOUR ROMANCEの磁場を作り出している。「崇高な趣味やこだわりはない」という彼らだが、その無意識の意識こそが、彼ら独自のスタイルであることに間違いない。


PHOTO: Shun Aihara

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