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ZEN-LA-ROCKとポール・オースター

5年ぶりの新作アルバム『HEAVEN』をリリースし、ホップでダンサンブルなナンバーが人気のラッパー、ZEN-LA-ROCK。自ら曲を書く彼に、影響を受けたアーティストについてたずねると、すこし意外な答えが返ってきた。

「僕、ポール・オースターという作家が好きなんです。そう言うとよく驚かれるのがちょっと心外なんですけど(笑)。といっても読書家っていうタイプでもなく、オースターが特別好きで、彼の作品はほぼすべて読んでいます」


ポール・オースターは現代アメリカを代表する小説家。1980年代に発表した“ニューヨーク三部作”(『ガラスの街』『幽霊たち』『鍵のかかった部屋』)で世界的な注目を集め、映画化作品も多数。ZEN-LA-ROCKの本棚の一角にはぎっしりとオースターの本が並んでいた。

「友達の家で何気なく手に取った『ムーン・パレス』がすごくおもしろくて。そこからハマって、オースターの作品を次々に読んでいきました。ほぼすべての著作を読んだと思いますが、やっぱり一番は『ムーン・パレス』。5回くらい読み返してます。次点は『鍵のかかった部屋』かな」

オースターの文学とZEN-LA-ROCKの音楽にどのような関連性があるのか、リリックを書く上で、オースターの作品からの影響をたずねてみた。


「2枚目のアルバム『THE NIGHT OF ART」のリリックは、『ムーン・パレス』にめちゃくちゃ影響受けてます。作中の好きなフレーズをノートに書き出してムーン・パレス語録を作ったり(笑)。柴田元幸さんの訳がいいからかもしれないですが、日本語がきれいなんです。幻想的というか。僕の中では、コーエン兄弟の映画とか、ティム・バートンの映画『ビッグ・フィッシュ』に近い感覚。どちらも好きな監督と作品。半分は現実なんだけれど、もう半分はちょっと嘘っぽい。僕自身の日常も映画の実写版みたいなところがあるというか、本当か嘘かわからないめちゃくちゃなことを言う友達とかがいたりして(笑)。そういう意味でオースターに近しいものを感じて惹かれるのかもしれません」

つづいて、好きな日本人作家をたずねると「山田太一さんです」という答え。

「山田太一さんの『異人たちの夏』が好きです。この方の作品も日常の中にちょっと変な扉があって、それを開けてしまったことで不思議な世界に巻き込まれるような感覚を受けます。非日常みたいなものに憧れがあるんでしょうね。ピーターパン症候群みたいな(笑)」

本棚にはまだまだおもしろそうな本がある。もう1冊おすすめの本をピックアップしてもらった。

「矢沢永吉さんの『成りあがり』です! コレ、みんな存在は知ってると思うんですけど、実際に読んだことない人って多いはず。騙されたと思って読んでみてください、すげー面白いですから!」

ご存知のように『成りあがり』は、貧しい少年時代を過ごした矢沢永吉が、「BIGになる」と夢を抱えて上京し、スターになるまでの軌跡を描いた、あまりに有名すぎる自叙伝だ。

「僕もどちらかというとこの作品を甘く見ていたところがあって。でもいざ読んでみたら、数々のドラマを切り抜けたサクセスストーリーで、かつそれを最大限に美しく描いていて……完全に引き込まれました。音楽もそうだけど、名作とされるものにはそれだけの理由があるし、絶対的におもしろいんですよね。再認識しました」

ZEN-LA-ROCKのブックレビューを頼りに、新たな読書世界への扉を開いてみては。そして、ぜひポール・オースターの『ムーン・パレス』を読んでセカンドアルバム『THE NIGHT OF ART』を聴いてみよう。



TEXT: 栗林彩
PHOTO: 七咲友梨

ZEN-LA-ROCK

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