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取捨選択から再構築する、尾花大輔創造のロジック



2002 年春夏シーズン、東京コレクションにてランウェイデビュー。2011 年からはその発表の場をN.Y.コレクションへと移し、世界規準で展開するN.HOOLYWOOD デザイナー、尾花大輔氏。もちろんそこに辿り着くまでの道程は、並々ならぬ研鑽と、こだわりの連続だったに違いない。そんな尾花氏のクリエイションにまつわるストーリー。まず話は、90 年代中頃まで遡る。

「当時日本は、ヴィンテージブームのど真ん中。僕自身もアメリカ西海岸を中心に古着のバイヤーをやっている中で、如何にヴィンテージ的価値の高い商品を買い付けるかということに注力していました。ただある時、ふとその価値観に疑問を覚えたんです。確かにヴィンテージ品としては貴重かもしれないけど、ファッションアイテムとしてその価値は、本当に正しいんだろうか、って。その頃ちょうどアメリカでも、モダンファッションの一角として古着をセレクトする新品系のセレクトショップが出てきたり、70s や80s の古着リメイクを頑張っている古着屋が人気を博したり、古着シーン全体が変わりつつある時でもありました。

そこに刺激を受けて僕も古着のリメイクを始め、go-getter(※当時尾花氏が立ち上げに関わった古着屋)の中で販売し始めたんです。それがさらに本格的に進んでいって独立するわけですが、当時はネットも発達してなかったから、情報源はすべて自分の足。とにかくその時代の西海岸でクールだと感じた場所へ頻繁に足を運び、そこに関わる連中と交流し、実体験としてその新しいカルチャーを感じながら、それらをひたすら自分の目に焼き付けることに集中しました。それを集約したのが、最初のMISTER HOLLYWOOD(※尾花氏が2000 年にオープンさせたショップ)。


ミスターハリウッドは外観や店内の装飾までこだわりが詰まっている。

それからN.HOOLYWOOD として正式にブランドを立ち上げたのが、さらに1 年後。最初の内は、今よりもっとシーズンテーマやモチーフカルチャーに正確に準じてコレクションを作ってましたね。今では、アトモスフィア的な部分とかパッション的な要素とか、その時々に僕がリアルタイムで感じている想いや考えを、より色濃く反映するようにしています。 もちろんアメリカ的な要素からインスパイアされていることには変わりありませんけどね」。

日本人目線で見た米国文化と、ローカルな体験に基づく生きたアメリカンカルチャー。恐らくそのハイブリッドなニュアンスが、今のN.HOOLYWOOD の世界観を作り上げているのだろう。そんな唯一無二のジャパニーズブランドは、今や世界のファッションシーンが注目するまでの存在に。そして現在その発表の場は、前述のとおりN.Y.コレクションへと移されている。2011 年から続くこの流れの理由を、今改めて尋ねてみた。

「僕の感覚では、N.Y.コレクションってすごくコマーシャルなところだと思うんですよ。売ることを前提としているっていうか。けど最近ヨーロッパのファッションシーンでも注目されているストリートカルチャーって、スケートにしてもヒップホップにしても、元を正せば結局はアメリカ生まれなわけじゃないですか。そう考えると、常にそういうシーンがアップデートされ、かつそれを受け入れていくことができるアメリカのスピード感って、やっぱりスゴいですよね。だから若手が自由な発想で創り上げたショーも、面白いと解釈できる土壌が広い。まぁ最終的にはそれをビジネスライクに商業化するのがアメリカなんですが、でもこれがパリやミラノだったら、きっとそういう風にはいかないはず。

昔も今もヨーロッパでは、王道的なアプローチが良しとされる傾向がありますから。でも本当にホットな情報って、そういう王道的な場所ではなく、新しいカルチャーに寛容な場所でこそ見つけられるものだと思うんです。だからウチはN.Y.コレクションを選んでいるし、僕自身、他ブランドのショーへも積極的に足を運び、常に新しい情報をキャッチできるようにアンテナを張っているつもりです」。


ここまでの話しを読み解くと、尾花氏のクリエイションについて、ひとつのロジックが見えてきた。それはつまり、知識・体験・感情・情報を交えての取捨選択、そして再構築。加えて最後にひとつ、ここまでの記事からは漏れたが、興味深い話しがあったので紹介する。それは、尾花氏と若手アシスタントとのエピソード。

「あの独特の粗い音が好きで、たまにあえてカセットテープで音楽を聴いたりするんですけど、ある時アシスタントに『テープB 面にして』って言ったんですね。 そしたら彼は、カセットテープにA 面・B 面があることを知らなかったんですよ(笑)。もうスゴい衝撃的だったんですが、カセットテープそのものを知らない世代が当然大人になっているというか。それは彼にとっても新しい発見だったわけですよね。ひょっとしたら彼は、これをきっかけにカセットテープについて掘り下げるかもしれない。 そしてこの小さな発見を、いつの日かクリエイションに繋げるかもしれない。知ってる人間からしたら『何を今さら』って感じだけど、自分が知らないことを掘り下げる熱量って、単純にカッコイイじゃないですか。思えば僕が古着のリメイクを始めた時も、似たような感じだったんですよ。当時周りの大人の中には、『そんなの今さら扱ってどうすんの?』って、懐疑的な目を向けてくる人も沢山いました。でもそういうフレッシュな探究心こそが、いつの時代にも新しい価値を生んできたんだと、僕は思います」。

周りの意見や固定観念に縛られず、新しいと思ったこと、面白いと感じたことはとことん掘り下げる。そしてたとえ立場が変わったとしても、他人のそれを理解する。デザイナー尾花大輔氏が最もセンシティブな部分は、その情報の良し悪しを嗅ぎ分ける嗅覚と掘り下げる力、そして普遍的な理解力なのかもしれない。

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