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Jay Shogoのライブペイントとアートの美学

2009年にロサンゼルスへ渡り、独学でアーティスト活動をスタートしたJay Shogo。世界最大級のアートイベント「Art Basel Miami」に2012年から招待されるなど世界中のアートイベントに参加、同時に国内外問わず数々の企業やブランドとコラボレーションし、多彩な作品を生み出している。

「2017年のArt Basel Miamiは12月10日にライブペイントをした。アメリカにはBeam Suntoryっていうサントリーの子会社があるんだけど、2016年からアメリカとカナダで販売してる季(Toki)っていうウイスキーがあって。アメリカではハイボールをオシャレでプレミアムな飲み物、みたいな位置づけにしようとしていて、2016年のArt Basel Miamiからそのプロジェクトに参加してるんだ。今年はJay Shogoと季のコラボレーションという形で、ライブペイント自体は7時間かけて、横幅15mぐらいの壁に“干支”を描いた。そのとき使ったのはSharpie(シャーピー)。アメリカではポピュラーなサインペンで、マッキーに近いものかな。Sharpieを使ったのは水がいらないし、準備が必要ないから。袋から出して、キャップを外せばすぐ描ける。そのときは太めのやつで20本ぐらい使ったんだよね」


マイアミのあとに訪れたのが、カリブ海に浮かぶ秘境・バルバドス。3年前にもJay Shogoはこの地を訪れ、そのとき描いた作品が、この地における“初めての壁画”なのだという。

「ちゃんと政府に許可を取ってね。今回、3年後に行ってるわけじゃん? でもみんな覚えてくれてたんだ、『“Happy Wall”を描いた人でしょ?』って。車で街を走ると、少しずつストリートアートが増えてた。今回は外じゃなくてCopacabanaっていうビーチバーの壁画を描いたんだけど、けっこうたくさんの人が観に来てくれて。そのとき使ったのもマイアミと同じSharpie。Sharpieで描くっていうのも、クライアント含め面白がってくれてるのかもしれないね」


Jay shogoのライブペイントは、ほかのアーティストに比べてもスピーディーかつ正確だ。描く際に、基本的には「下書きをしない」と聞いて驚いたが、さらにその描き方に、Jay Shogoのライブペイントの魅力の一端を垣間見る。

「TokyoDexの5周年パーティーのときに描いた“Wolf”。これ、ここ(足)から描いたんだよ。つまり、見てる人は最後にWolfってわかる。“何を描いてるかわからないように描く”っていうのが俺のやり方。それもライブペイントにおける演出だよね。ライブペイントは人を楽しませてなんぼだし、ただ動物を描くなんて簡単じゃん?」


2017年は今まで以上にライブペイントの依頼が増えていたという。とりわけ、2016年の六本木アートナイトを転機に、流動的な線で動物を描くアートへの手応えを感じているようだ。

「アートって抽象的なものを描く人もいれば、俺みたいに具体的なものを描く人もいる。六本木アートナイトは六本木ヒルズに人がたくさん来るから、線を使って誰もが知ってる動物を描くことで、『これゴリラだな』とかお客さんがわかりやすく立ち止まって見てくれたりする。アートの入り口を広げたいし、アートって自己満じゃダメなような気がしてさ」


Jay Shogoは、クライアントや見るお客さんにとって“優しい”アーティストだ。アーティストにありがちな「俺はこういうことを伝えたいから理解してくれ」というような傲慢さが、彼の作品からは感じられない。広くわかりやすいものを、常に新しいやり方で描く。

「やっぱり仕事をしていくうえで、『次は違うことをやりたい』っていう意識が常にある。毎年、Art Baselの前後に新しいアイディアが浮かぶんだ。2010年ぐらいからそれがずっと続いてる。これまでいろいろ描いてきたけど、まったく異なるタッチや作風のものを描いても、自分のバックグラウンドとかが常に作品の中のディテールに反映されてはいるんだよね」


Jay Shogoのアートの始まりは黒色のマジックだった。下書きはせず、自分が思ったものだけを描いていった先に、“Ya-man”というキャラクターが生まれた。

「ブラック&ホワイトで描くYa-manのあとに、ほかのマジックの色を使ったりして、よりポップなものもやってどんどん変わっていった。絵の具とかも昔は使ってたんだけど、マジックでデビューしたようなもん。それで2013年ごろから壁画の仕事が増えてきたから、スプレーを使えた方がいいんじゃないかって考えて、マイアミからニューヨークの5Poinz(ファイブ・ポインツ)に行ってスプレーのテクニックを学んだんだ」


5Poinzは“グラフィティの聖地”や“世界最高の落書きのメッカ”などと呼ばれる場所。Jay Shogoはこの地に作品を残している数少ない日本人だ。筆、マジック、スプレー……どんな道具でも使いこなせる技術を身につけたJay Shogoは、そこからさらに数多くの現場を経験し、アーティストとしてのポテンシャルを高めていった。

「当時と比べて、集中力も技術も体力も上がってる。あとアイディアの引き出しも増えた。例えばあるキャラクターを描けって言われたら、大抵の人はそれを描いたらもう終わり。でも自分の場合、それ以外に家や山や川、あとはビルを描いたり。さまざまなものを描けることでより良い作品を生み出せるようになった。あと道具に関しては、東京だったらハンズに行けばある程度は何でもそろうけど、世界へ行けばそうじゃないことの方が多い。そういうところでどう自分が動くかも身に付けてきてる。サバイバルに近いからね、アートは」


Jay Shogoは狭い価値観にとらわれず、さまざまな場所を訪れ、いろいろな人たちと出会い、作品のインスピレーションを得る。気持ちはいつも初心――彼はアーティストとして“あぐらをかいていない”のだ。

「海外では世界で活躍してるプロと仕事をすることになる。彼らの作品も実際にこの目で見てるし、その経験が財産になってる。例えば壁画をコラボレーションで描くこともあるわけだよ。そのときにその人の筆を借りたりして、その刷毛の形や固さ、絵の具の具合とかを事前に体験させてもらうようにしていて。あとその人がどんな感じで筆を走らせるかもその場で見る。そういうときにも新しいアートに出会うことができるし、ただ単純に……アートが好きなんだよ」


インタビューの最後に、Jay Shogoはマイアミで開催された「SCOPE」というアートフェアへ行った際に撮った写真を見せてくれた。ひとつひとつの作品について語るその目はまるで少年のよう。けれど『誰の作品ですか?』と聞くと、『知らない』とJay Shogoは答える。

SCOPEに作品を出すぐらいなのだから、きっと界隈では有名なアーティストなのだろう。だが、Jay Shogoにとってそのアーティストが有名か無名かは関係なく、シンプルにその作品の素晴らしさだけを見ていた。それはアーティストとして限りなくピュアであることを表しているし、同時にJay Shogoは彼らと同じレベルの土俵にいることも意味している。

Art Basel Miamiを終え、新たな年を迎えたこの時期に、Jay shogoの中ではまた新たなアイディアが浮かんでいるのだろう。これまでとはひと味違った作品に出会える日もそう遠くないはずだ。ただし僕らが身構える必要はない。きっとJay shogoの新たなアートも、僕ら見るものに優しく、シンプルにあっと驚くような、純粋に心を揺さぶられるような作品であることは間違いないのだから。



TEXT BY:ラスカル(NaNo.works
PHOTO BY:Jay Shogo,Dorami,Cynthia Halverson

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