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江川”YOPPI”芳文が語る、ファッションのA面B面

東京ストリートカルチャーのキーマン、江川”YOPPI”芳文。1980年代からT19所属のスケーターとして支持を集め、90年代には今や伝説として語られるファッションブランド<ヘクティク>をスタート。00年代にはピストバイクムーブメントを牽引し、現在は、関正史と共に立ち上げたブランド<オンブレ・ニーニョ>のデザイナーとして支持を集めている。

様々なアプローチでシーンをリードし続けるYOPPI。彼のファッション、そしてスケーターとしてのパフォーマンスを支えるパンツとスニーカーとは? 足まわりのスタイルから話を始めると、彼のアイテム選びのこだわりの源泉が見えてきた。


いなたい服を選ぶ器があるかどうか

駒沢公園スケートパーク前。YOPPIは<Girl>のスケートボードを片手に、リラクシングなスタイリングでふらりと現れた。「ちょうどいいダサさっていうか、いなたい感じのアイテムが気分で」。パンツやスニーカーの選びかたを聞くと、“ダサい”という意外な言葉から話をはじめた。

「ダサいの“ダ”くらいっていうか。カッコいいとダサいのギリギリのバランスのアイテムが好きです。一見やぼったい感じのパンツやスニーカーを堂々と履く気概のある人はかっこいいと思うし、スケーターもそういった人に惹かれます。それに、カッコよすぎる服って、着るときどこか恥ずかしくなっちゃうんですよ(笑)。頑張って買うんだけど、頑張ってる時点で最初から負けてるっていうか」



改めて今日のパンツを見てみると、アウトドア用パンツをツイル素材で再構築したようなデザイン。膝当てや着脱用のサイドボタンなどのディテールがほどよいやぼったさを残している。

「他にないものとか、ちょっとハズした感覚が好きで。どこか天邪鬼なんでしょうね」と笑うYOPPI。その“外し”の感覚は、今日のキャップにも現れている。


「NYのピザ屋のキャップです。日本だと全然知られてないんじゃないですかね、地元の人とか実際に現地に行った人じゃないと。土産物みたいなTシャツとかキャップとか大好きです。そこに行った人しか分かり得ない、買えないアイテムっていいですよね。手に入れる過程も含めて」


今の気分はストレートパンツ

そんなYOPPIが選ぶパンツについて聞いてみると「最近はリーバイスの514が多い」という。

「最近はストレートの無骨な感じのパンツを選ぶことが多いです。ちょっと前スケーターたちの間で細身のパンツが流行りましたけど、みんながそっちなら俺はこっちかなっていう感じで」



流行から外したいという意識はメインストリームに対するアンチの姿勢なのだろうか。

「いやいや、昔は流行に寄せてみようと頑張ったこともあったんですよ。細身のパンツもトライしたんですけど、どうも疲れちゃって挫折しました (笑)。そうやってトライ&エラーを繰り返しながら、今はストレートのパンツ。また変わるかもしれないですけどね。でも確かに流行に乗っかるのはあまり好きじゃないんでしょうね、ちょうどいい外しを狙いたい」

では、スニーカーのチョイスは?と聞くと「今日はコンバース。ド定番ですね…外したいって言ったそばからスミマセン (笑)。ゴアテックスで防水だからとにかく使えるんです。頼りまくってます」と笑う。確かにコンバースのチャックテーラーは定番中の定番スニーカーだ。


普遍的スタンダードに対する姿勢がスタイルになる

「流行に左右されない普遍的なものってあると思うんです。スニーカーならコンバースやVANS、パンツだったらディッキーズとか。選ばれ続ける理由はあって、スケーターだったらデッキテープに擦れても大丈夫なタフな生地だったり、値段とクオリティのバランスだったり。そういう絶対的なスタンダードに対して、その時々にどういうスタンスを取るかが、スタイルに現れると思うんです。僕の場合はそこに元からの“外したい欲”みたいなのが加わって、その結果としてストレートのパンツみたいな今のチョイスがある。こだわりっていうか、ノリだけって感じですけど(笑)」

日々感じる肌感覚を自らのスタイルに柔軟に反映させていく。本人は “ノリだけ”と謙遜するが、そのしなやかさはかえって力強さを感じさせる。


作るものは自分の好きなもの

<オンブレ・ニーニョ>のデザイナーとしてパンツやスケーターソックスも手がけるYOPPIだが、自らのファッションとデザイナーとしての創作ではどのような違いがあるのだろう? そう聞くと「全く同じ」だと答える。

「自分が履くもの、着るものしか作らないです。例えばスエット型のディッキーズがあったらスケートボードにいいなと思ってブランドで作ったり。でも『結局普通のディッキーズもいいじゃん』って思う自分もいるし、かと思えば『最近みんな普通のディッキーズ履いてるから』って、新しいものを作りたくなることもある(笑)。行ったり来たりを繰り返しながら、そのタイム感がそのままブランドのシーズンごとの展開に反映されています」

「欲しいものしか作らない」というスタンスはシンプルなようでいて、ビジネス的には困難も伴うはず。けれどYOPPIは「結局好きなことをやることが一番長く続く」と言う。20年以上も東京ストリートシーンで支持を集めながら、インディペンデントの姿勢を貫くYOPPIだからこそ真に迫る言葉だ。


「置かれている状況って、いろいろな要素を含んでいるじゃないですか。僕でいえば日本のスケートボードシーンやファッションシーンがベースにあって、その中での自分の立ち位置みたいなものがあって。そういう複雑な影響の結果として、その時の気分やノリが生まれる。僕はそれを大事にしたいんです。まあだいたいレコードでいうB面を推したいタイプではあります。と言いつつコレ(コンバース)は思い切りA面なんですけど(笑)」

絶対的な正解を固定せずに、感覚にしたがって変化し続けること。A面的なメジャー感とB面的外しのゆらぎの中で自分らしいスタンスを選ぶこと。ストリートシーンの歴史と現在を知るYOPPIだからこそ感じる生の肌感覚が、自身のファッションに、そしてデザイナーとしての洋服作りにダイレクトに反映される。だからこそ、YOPPIのスタイルは世代や年代を超えて常に支持を集め続けるのだろう。


PHOTO: 七咲友梨

江川“YOPPI”芳文

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