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GUNHEADの移動するプライベート空間

横浜球場に鳴り響く、ラッパーMaccho(OZROSAURUS)の熱声。横浜DeNAベイスターズが掲げた2017シーズンのスローガン「THIS IS MY ERA.」を、地元出身のラップグループOZROSAURUSが応援歌へと昇華した。いまやヒップホップが球団のテーマソングになる時代なのだ。そしてそのトラックをつくったのが彼、GUNHEAD。

GUNHEADのトラックメイカーとしての活躍は30代中頃から。遅咲きの努力家だ。もともとはナードコア・テクノユニット、LEOPALDONのメンバーの一員だったが、メンバーの高野政所がゲームにハマりすぎて活動が停滞。その間にGUNHEADがソロ活動で作った、日本語ラップのクラシック"証言"のリミックスがZeebraの耳に留まってフックアップされ、人生が急展開する。数多くのトラックメイクやリミックスワークが舞い込むようになった。

その後「気付いたらなんとなくBingoさんと結成していた」というDJユニットHabanero Posseは、徹底した現場主義で数多くの現場を湧かせた。ベース・ミュージックの祭典『OUTLOOK FESTIVAL JAPAN』で行なわれたサウンドクラッシュでは2度の優勝を遂げ、殿堂入りとなった。

それだけではなく、レゲエ界の重鎮であるFire Ballなどのサポートも行い、数多くの現場のステージに立ってきた。彼は、ヒップホップ、テクノ、ベース・ミュージック、レゲエという、クラブミュージックの各ジャンルに接続できる、数少ないオールラウンドプレイヤーといってもよいだろう。シーンに関わる人なら耳にしたことがない人は少ないはずだ。


再燃したバイク趣味

ご覧の通り、彼の趣味はバイク。「みんな朝起きてジョギングをするじゃないですか。それと同じで天気が良ければ乗るようにしてますね」と言うように、バイクは彼の1日のルーティンに組み込まれている。

5年前の引っ越しを期に旧車のようなスズキGN125に乗ることを辞めてしまった。それからGUNHEADのバイク熱が再燃したのは、今年の浜松での遠征。近隣にメーカーの工場が多い浜松駅内に、展示されていたスズキのバイクGSX-R250に目に止まった。現物を見たGUNHEADは気持ちが高まり、手の届く額だったのでおもわず2週間後にはバイクを購入。GUNHEADの元にYAMAHA YZF-R25がやってきた。


「最初はスズキのGSXが欲しかったんです。ただ、都内で乗るには取り出しも簡単だし小回りも効くから、僕が狙ってたのは250でスポーツタイプ。YZF-R25は、250の中でもパワフルなんですよ。厳密にいうと一番パワフルな250は、HONDA CBR-250RR。でも、価格が排気量が上のクラスと変わらなかったのでYZF-R25にして。あとレースをやっているバイク屋の店員さんが、サーキットで同クラスのバイクと比較して『圧倒的に走っていて楽しい』という意見もあり、YZF-R25に決断しました。見た目では2つ目のライトが好きなんです」

以前に乗っていた車種に比べると、車体自体が進化をしている。「乗りやすいですね。最近のバイクは制限がかかってて、馬力がすごい抑えられているんです。もっと出そうと思えば出せるはず。昔載ってたバイクは規制前で馬力が全然高かった。だけど今はスピード狂ではないので。おそらくメーカー側が、若い世代の人がバイクを買わなくなったので、買いやすさを意識して安全性を重視してるんじゃないかな。最近250のスポーツタイプはインドネシアやタイ原産が多いんですよ。アジアで売れている影響もあって、ここ数年でめちゃめちゃ充実していて」と、GUNHEADはその進化を語る。

バイク好きになったのには意外なルーツがある。彼の父親が結構ハードコアなバイク乗りだったことが大きい。バイクが子供の頃から親しく近しい存在であった。「うちの親父が白バイの全国チャンピオンなんですよ。部門優勝かな?年1回の家族旅行が開催地の鈴鹿サーキットで。僕らは鈴鹿サーキットの遊園地で楽しむみたいな。ただ、当時はなんの記憶もないです。それもあって自然と原付きに乗るようになったんです」と、昔を振り返る。


音楽と向いあい過ぎた私生活

バイクを手に入れてから「生活がまるで変わりましたね」という。基本的にGUNHEADの生活は、クラブ、スタジオ、自宅の往復がサイクル。そして自宅にいるときもトラック制作で音が鳴る。その中に、移動できる無音のプライベート空間が登場したというわけだ。

「音楽をまったく聴かない時間ができて面白いです。寝るときも音楽を垂れ流しにしてそのまま寝ていたんです。最近買ったプレイリストを流して、そのまま寝落ちして。圧倒的に寝汗をかくのが、Robert Armani(キックのアタックの強いシカゴハウス)でしたね(笑)。悪夢を3回くらい見ました」

まさに身体に音楽を覚えさせるような日常だが、本人には音楽と向き合いすぎたことがストレスになっていた。「音楽と接してない時間が怖くて。ただいろいろ爆発しそうになって逃げ場が欲しいと思ったことが、バイクを購入する後押しになりましたね。完全に商売にならない息抜きの趣味です」


視覚を通じて孤独を楽しむ

クラブなど音楽の現場では必ずといってもいいほど酒が出てくるので、バイクと相性は悪い。もともとアルコールを嗜まないGUNHEADには問題ないが、バイク仲間が少ないのも悩みどころ。「まじでいないですね。ビックリしました。この間しゃべったのがFIREBALLのSUPER CRISSさんとマグロックだけ」。ただ、賑やかな音楽の現場から切り離されて、ひとり遊びができるようになり、バランスが良くなった部分もあるという。

ひとりで向かうお気に入りの場所は、近場の工業地域や高速道路。手軽にステレオタイプな非日常感を味わえるという。遠方では沼津の友人宅に。「日帰りで帰る予定が犬が可愛くて2泊しちゃいましたね。終電や帰りの時間を考えずに満足いくまで遊べるようになったのもデカいですね。仕事もそうなんですけど」。

品川在住のGUNHEADが、オジロザウルスの活動で横浜に向かう際、バイクのお陰で時間が短縮できたという。高速を使えば30分。電車移動よりも早い。他のメンバーは車で移動する際、ひとりでバイク移動することも。「活動拠点が横浜になって、週1、2回は往復していて。圧倒的に便利ですね。あと女の子と離れた飯屋に行けて。初めて乗せた女の子と行った場所が川崎のラウンドワン。横浜で家系のラーメン食って帰りにラウンドワンに行って。バイク停められて24時間営業なんですよ。都内と違って神奈川文化ですね。サバーバンというか(笑)」。


そして、ドライブは音楽活動にもフィードバックがあるという。「やっぱありますよ。このシチュエーションや景色に合うものを作りたいなとか。例えば、OZROSAURUSのMacchoも車で出かけた先でリリック考える人で、その時の共通言語が増えたというか」。

「山にいくと景色が良くて開放感があるから、ついつい自然と声が出てしまうことがありますよね。その単純な開放感が音楽に例えると、クラブミュージックでのブレイクがあってビルドして盛り上がる感覚に通じるかなとか考える切っ掛けになったり」

生活に新しいサイクルを加えることで、作品へも影響があることが伝わったはずだ。今後はバイクによってもたされた体験からインスパイアされた曲も出てくるだろう。


TEXT: 高岡謙太郎
PHOTO: 寺沢美遊

GUNHEAD (HABANERO POSSE)

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