search search

ディグって見つける、書道家・万美の着物スタイル

グラフィティを書道と同じ視覚的言語芸術ととらえた “Calligraf2ity”を提唱する、書道家の万美。伝統的な書道に、ストリートカルチャーの要素を取り入れたスタイルで活動する彼女は、人前でパフォーマンスとして書道をする機会も多く、その着物姿が印象的だ。当初は必ずしも着物を着ていたわけではなかったという彼女だが、現在のスタイルに行き着くまでにはどんな変遷があったのだろうか。

地元・山口に住んでいた幼少時代から、いとこのお下がりの着物を着せてもらう機会が多かったという万美。茶道の先生だった祖母の影響もあって日本文化へ興味を持ち、小学校の書道の授業をきっかけに教室に通い始め、高校生の頃には書道を仕事にすることを決意する。着物を頻繁に着る機会が増えたのは、人前で書道のパフォーマンスをする仕事が増え始めた、ここ2年ほどだという。

「それまでは正直ジャージの方が楽だし、セールで半額になったお洋服を着て、汚れてもいい状態で書いてました。でもそのうち、セールで買ったような服で人前に出ていいのかなと思い始めて(笑)。ちょっと奮発しておしゃれなワンピースを買ってみたりもしたけど、結局速攻で汚れちゃうのが嫌だなと思ってたんです」


そんな時期に海外でのパフォーマンス経験なども経て、彼女が行き着いたのが着物。当然のことながら、着物も墨で汚れてしまうのだが、彼女が着物を手に入れているのは、なんとリサイクルショップなのだという。

「リサイクルショップだと、なぜか洋服よりも着物の方が安いんです。だから、汚れてもいい作業着みたいな感覚で着物を着てますね」

さらにパフォーマンスで汚れてしまった着物は、裁縫の得意な友人にクッションやポーチなどの小物に仕立て直してもらい、形を変えて使い続けているのだそう。そんな風に気負わず着物を楽しみ、現在は30着ほどを所有している彼女だが、そのためには日々リサイクルショップでの探索が欠かせないという。

「DJがレコード屋に行く感覚に似てると思うんですけど、常に行っておかないと、何が入荷してるかわからなくなるので、こまめにディグっておかないとダメで。大阪に行きつけのリサイクルショップがあるんですけど、そこは一部の人には有名な店なので、京都の貸し衣装屋さんなんかもディグりに来てるんですよ。貸し衣装屋さんはダンボール2箱とか買っていくので、入荷したらその前に買わないと一気になくなっちゃうんです(笑)」


ストリートカルチャーと書道を繋げ続けてきた、彼女らしい感覚に膝を打つ。そして、着物を着るうえで、ハードルのひとつになるのが着付けだが、これもまた彼女流の勉強法があるのだという。

「YouTubeの着付け動画なんです。動画ごとに、手順がわかりやすい部分とわかりにくい部分があるから、いろんな動画を何回も見て覚えました。あと、茶道の先生と一緒にお仕事をする機会が多いんですけど、茶道の先生は着付けをすごくきっちり細かいところまで見られるので、自分の着付けのおかしな部分を教えてもらって。だんだん改善して、今はどうにか1人で着れるようになりました。調子がいいときは、15分くらいでいけますね」


長い歴史の積み重ねがある分、多くのルールやマナーがある着物の世界。とはいえそこにとらわれすぎないのが彼女らしい。

「私も正直なところ、着物のルールを全部わかってるわけじゃないんです。大丈夫かなと思いつつなところもあるし。でも、間違ってたらきっと誰かが教えてくれると思うし、どうにかなるかなって(笑)」


たとえば着物の選び方も、着物の色をイベントのフライヤーに合わせたり、自身の誕生日の6月6日から、柄に六角形の亀甲紋を選んだりと、とことん自分らしいスタイルで実践しながら、その芯をつかみ取っていく。そんな彼女が考える着物の魅力とは、どんなところにあるのだろうか。

「古くから伝わるものは、流行とはまた別の道を進んでいて、廃ることがない。そこが古いものの強みだと思います。それに洋服だったら、今日みたいな白とピンクと紺の組み合わせは結構派手だけど、着物ならなじむ。こうやって洋服ではできないコーディネイトができるところもおもしろいです。大切にすれば孫まで着れますしね


そうした普遍性はもちろん書道にも通じるところ。着物も書道も、彼女のようなハイブリッドな存在が発信していくことで、次世代にカルチャーが繋がってゆくのでは、と問うと、「そうなったらありがたいですね」と微笑んだ。

Text: Yuri Matsui
Photo: Takao Iwasawa
協力: HIGASHIYA GINZA

SHARE

}