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掟ポルシェ流・男のロングヘア


ニューウェーブバンド「ロマンポルシェ。」のボーカル及び説教担当、ひとり打ち込みデスメタル「ド・ロドロシテル」、DJ、ライターなど多彩な活躍を続ける掟ポルシェ。黒髪のロングヘア。目をぐるりと囲んだ銀ラメメイク。カラフルなサンバイザー。一度見たら忘れられないその強烈なビジュアルがトレードマークだ。そのアイコニックなスタイルの背景には、本人の人となりが窺えるこだわりが隠れているのではないだろうか?


取材の待ち合わせ場所は、掟ポルシェが長年愛する街・中野。白いスーツにサンバイザーを被ったいつものスタイルで愛用のママチャリに乗ってふらっと現れた。普段からこの格好のままどこへでも移動するらしい。

「二十年以上この髪型ですが、ロングヘアについて聞かれることっておそらく初めて。『シャンプーは何を使ってますか?』なんて、アイドルじゃないんだから! 『瞼に塗っている銀色のは何ですか?』とはよく聞かれますが(笑)」。と笑いを誘う発言で場を和ませてくれた掟ポルシェにロングヘアにしたきっかけを尋ねてみると、思わず脱力してしまう意外な答えが返ってきた。



「ロングヘアって楽なんです。もともと髪の毛の量がすごく多くて、このボリュームをどうにかできないかと考えたのがこのヘアスタイル。短髪に比べてまとまりやすいし、スタイリングもムースつけてそれでおしまいですね」。

やや肩透かしをくらいながら、ロングヘアというスタイルと音楽活動に関連性がないのかを探るべく、高校時代に話を向けた。


「高校時代はザ・スターリンの遠藤ミチロウさんみたいにスプレーで立たせた短髪で、まだ長髪にはしていませんでした。地元の北海道留萌市では、当時日本のものを中心にハードコアパンクが大流行していて。周りの友人たちがバンドを組んでハードコアのオリジナル曲を作ったりする中、自分はバンドが組めなかった。ハードコアも好きだったんですが、それよりも当時はイギリスのニューウェーブのほうがより好きで、ポジティブパンクみたいな暗くて重くて陰鬱な音楽に心酔していて、似たような趣味の人もいなかったので。だから当時はバンドも長髪もできなかった。バンドをやってた先輩で長髪の人もいましたけど、田舎だからほぼ異常者扱いですよね」。


高校時代は髪を伸ばしそこなった掟ポルシェだが、意識下ではロングヘアへの憧れにも似た思いが芽生えていたのではないだろうか。高校卒業後、上京と同時に髪を伸ばし始め、掟ポルシェの長髪人生がスタートした。ロングヘアと聞くとロックやメタルなどのミュージシャンが思い浮かびやすいが、掟ポルシェの場合は「ゲイのミュージシャンに憧れた」と言う。

「イギリスのニューウェーブとかで、自分の好きなミュージシャンって何故か大体ゲイなんですよ。『ゲイがおしゃれ!』みたいな勘違いした風潮が80年代局地的にあって、それに若気の至りで全力で流されて、『俺も大人になったら東京に行ってゲイバー勤めするんだ!』と奇特な志を抱いたこともありました。でも、向いてなかった。性の対象として男が好きじゃないんですよ。ということで、ゲイ計画は早々に諦めて。なろうと思ってなるもんじゃないですよね。ロングヘアについては、普通の髪型にはしたくない、かといって丸坊主の自分は想像できないし、そうなると自然と選択肢が長髪しかなかったんです。ただの消去法」。


音楽が好きなのにバンドが組めない、ゲイに憧れるのに性的にはノーマル。欲求のはけ口が見つからない不遇な青春時代を経てたどり着いたロングヘアというスタイル。それを続ける理由は、いわゆる“普通”へのアンチの姿勢に加え、経済的なメリットも大きいという。


「90年代は女子プロレスと中古のシンセサイザーに金をつぎ込んで200万円ほど借金を作って、髪の毛にかけるお金が全くない時期で。ある程度の長さになると自分でザクッと切っていました。そういう意味では貧乏人に優しいヘアスタイルですよ。コラムの仕事で食べられるようになってから、ようやく気が向いた時に美容室に行くようになりましたね。そこの美容室に通ってたのも、かわいくて巨乳の美容師さんがいたからっていう理由で。なぜか俺の担当はいつも別の人だったんですけど」。


借金時代の渦中の97年に「ロマンポルシェ。」としてバンド活動を開始し、20年以上に渡ってロングヘアを貫いている。バンドを始めた頃に誕生したもう一つのトレードマークが銀ラメメイクだ。

「『ロマンポルシェ。』は異常なことをやっているという意識がある。異常なことをやるのに、素顔のままステージに出て行くのは恥ずかしいじゃないですか。1997年の初ライブの前に、たまたま立ち読みしたファッション誌に、瞼のあたりにすごいラメを塗っている人がいたんです。見た瞬間、これだ!と思ってまんまパクりました(笑)」。

銀ラメメイクと同じく、見る者に強いインパクトを与えるのがサンバイザー。「Berryz工房のCD発売イベントのノベルティでサンバイザーをもらったのがきっかけです。大人がサンバイザーを被っていると確実にバカに見える、その感じがたまらなかったんですよ」。


こうして音楽のキャリアとともに、現在のスタイルを確立してきた掟ポルシェ。ロングヘアをやめようと思ったことはないのか?と突っ込んで聞いてみると、きっぱり、「ない」と答える。

「長髪をやめたいと思ったことはないですが、年齢のせいもあってか若干サンバイザーを被っているラインに沿って前髪がヤバくなってきていまして。長髪は髪の毛にとって本来よくないんですよね。とはいえ、他の髪型にするのはとても抵抗があるのでなんとか死守したい。“長髪で銀ラメ、サンバイザーいえば掟ポルシェ”というアイコンで、いけるとこまでいきますよ。本格的にハゲてきたら植毛でもなんでもして(笑)」。


確かにロングヘアはいざとなれば自分でもカットできて経済的。けれど、同時にロングヘアの持つ反体制的な佇まいが、型に収まらない掟ポルシェの生き方とリンクしている。それが二十年以上貫く男のロングヘア、ということかもしれない。


photo: Yuri Nanasaki
text: Aya Kuribayashi

掟ポルシェ

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