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ニューヨークで挑戦することの意味。 LANDLORD デザイナー 川西遼平

2018年度AWシーズンのニューヨークコレクションで一際異彩を放った、一人のデザイナー。セントラル セントマーチンとパーソンズという世界最高峰のファッション教育機関2校を卒業し、ニューヨークを拠点に活動するブランド〈LANDLORD〉を手掛ける川西遼平。4度目となる今回のニューヨークコレクションに挑む彼が創造するブランドの世界観、そして意気込みについてインタビューすべく、コレクション前夜のタイミングで現地に構えるアトリエを訪れ、話を訊いた。


“なるようになれ”ってスタンスでここまでやってきた。


—念のため、LANDLORDを知らない読者の方のためにも、どんなブランドなのか簡単に教えていただけますか?

「ロンドンにあるセントラル セントマーチンとパーソンズという美術系の大学に通っていて、在学時代にもブランドをやっていたんですが、卒業を機にニューヨークに拠点を移して立ち上げたブランドです。学生時代とは違い、リアルクローズに特化した服作りをブランドの根幹に置いています」。


—昨シーズンに比べ、ラインナップするアイテムの数もかなり増えましたね。

「そうですね。ブランドとしては3年目に突入して、ようやくルーティンにも慣れてきたかなというタイミングで、自然と数も増えて、規模も大きくなっていった感じですね」。

—今回のニューヨークコレクションでプレゼンテーションも含めると4度目。そもそもこうしたコレクションに参加しようと思ったきっかけはなんだったのでしょう?

「きっかけはたまたまで、友人が手掛けるテルファーというブランドがあるんですが、そのショーを見に行った時に色んな人と出会ったのですが、その時にニューヨークコレクションを主宰するCFDAという機関を紹介してもらったんです。それからまずはプレゼンテーション形式から参加してみませんか? と連絡を頂いて参加するようになったんですよね」。


—なるほど。ブランドを立ち上げて間もなくコレクションに参加することになり、分からない部分も多かったのでは?

「そうですね。最初はスタイリストやキャスティングの人に相談しながらなんとか形にできたという感じでしたね。それでしばらくはそのスタッフたちと共に数シーズン一緒にやってきて、今回から新しいスタッフに変えて挑んでいます」。

—そのスタッフを変えたことに関しては、なにか理由があったのですか?

「まだちょっとバタバタしていて、揉めている部分もあるんですけど(笑)」。


—明日が本番というタイミングで(笑)。


「僕は基本的に“なるようになれ”ってスタンスでここまでやってきて、とりあえずやってみて、そこからやり方を見つけていくっていうタイプなんですね。そこが今回のスタイリストと根本的に違ったというか、初めから明確なビジョンを持っていたいというタイプの方だったので、認識を共有するのに苦労していますね」。

—やはりそうした衝突はあるんですね。今回のショーに関わるイニシアチブはどちらが握っているのですか?

「もちろんビジュアルに関しては、最終的にスタイリストに委ねていますが、その過程における洋服作りとかは完全に僕のクリエイションになりますよね。そこでのお互いの関わり方が難しいですよね」。


今のニューヨークの空気感を伝えたい。


—その他、演出やキャスティング、BGMなどで特に意識されていることはありますか?

「やっぱりキャスティングですかね。服をよく見せられるかどうかというよりも、今のニューヨークの空気感を伝えたいだけなんですけどね。だからこそスタッフは日本人で固めずに、必ずローカルな人たちを起用するっていうことを意識しているんです」。


—なるほど。ただ、そうなると文化の違いなど、よりコミュニケーションなどで苦労することも多そうですね。

「もちろんリスクもありますし、ストレスを感じることも多いんですけど、結果的にそっちの方がニューヨークっぽさっていうのは表現できますよね。今回もまさにそのストレスを感じている最中なんですけどね(笑)」。

—でも結果的に納得のいくモノ作りをしていくということは、デザイナーである以上の使命感でもありますよね。ちなみにこだわりを持っているキャスティングについてですが、モデルさんは皆プロの方ですか?


「素人が大半ですね。やっぱり事務所に頼らず、現地のキャスティングに頼むことで、どっから連れてきたのっていうモデルの子もいますし、幅が広がりますよね。傾向としては意識はしていないんですけど、黒人のモデルが多いですかね」。


—川西さんの中でコレクションっていうのは、ブランドを表現する上でどういった立ち位置にあるモノなのでしょうか?

「単純に宣伝ですかね。ビジネス的な視点でいうと、ブランドを立ち上げてからすぐにコレクションへ参加することで、急速に認知度を高められますし、世界観を知ってもらうマーケティングツールとしては最適ですよね」。

—とはいえ、LANDLORDはリアルクローズとしての側面も持ち合わせていますよね。


「やっぱり洋服を楽しんでもらえる10代とか20代とかの子たちに着てもらいたいという想いも強いので、価格帯も他のメゾンブランドなんかと比べたら格段に安いですし、だからこそ洋服に付随するイメージは大切にしたいんですよね」。


—コレクションに参加する他のブランドなどのショーは拝見したりしますか? それこそニューヨークでは同じ日本人が手掛けるN.HOOLYWOODも参加していますよね。

「デザイナーの尾花さんはすごいなって思いますね。僕とは違ったベクトルで構成などもきちんとしている。僕らのところはハプニングありきというか、開けてみないと分からないので(笑)」。

—そういったブランドやデザイナーさんを意識することはありますか?

「まぁブランドのキャリアも資金力も違うので、あまり意識というか真似ることはないですね。性格的にも違うと思いますし。もしかしたら今後僕のブランドも成熟していく中でマインド的な部分は変わっていくのかもしれないですけど。今は限られた条件の中でやれることをやるだけですね」。


—ちなみに今回のコレクションのテーマは“パンク”とお聞きしたのですが、そこにはどういったメッセージが込められているのですか?

「もちろん僕自身ロンドンに住んでいたこともあって、その当時のアティチュードを込めているのもありますし、ブランドをやっていく中でメンズファッションで考えうるスタイルを虱潰しに試してみたいという想いもあるんです。1シーズン目はミリタリー、2シーズン目はワーク、3シーズン目はヒップホップ、4シーズン目はレゲエ。そして今回がパンク」。

—良い意味でブランドの色を確立しないということなんですかね。

「良く言えばそうですね(笑)。でも僕自身がやってみたい挑戦的な意味もあるし、ブランドを知ってくれる人も記憶に残りやすいじゃないですか。従来であれば、その逆で一つのテーマをブランドを通して表現していくことが主流だと思うんですけど、Instagramを見ても最近の若い子の趣味や傾向も変わってきて多様性を持っていますよね。そういったところにアプローチする方法としては面白いのかなと」。


—そういった多様性に富んだラインナップをシーズンごとに打ち出すというのは、まさにニューヨークという街が持つ、雑多感という部分にも繋がっていきますね。

「確かにそうですね。イギリスにいた学生時代にやっていたブランドとかは一つのスタイルを追求する形だったんですけど、それがニューヨークに移ってみたらちょっと違うかなって思ったりもして。人種の坩堝感はあるかもしれないですね」。


川西遼平
1987年鳥取県生まれ。2011年にロンドンの名門セントラル セントマーチンのニット科で学士号を修了。その後、ユニクロの「Tomodachi-Uniqlo」フェローシップによってパーソンズに入学し、2015年に修士号を修了。同年、自身が手掛けるブランド「LANDLORD NEW YORK」を設立し、クリエイティブ・ディレクターに就任。ニューヨークを拠点に日本はもちろん世界各国で展開し、ニューヨークコレクションにも継続的に参加中。

 

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