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モデル/アーティスト 小野原聡が語るステッカーの醍醐味

モデル・俳優として、ファッション雑誌や広告、TVCMなどで活躍する小野原聡。彼にはアーティストとしてのもうひとつの顔がある。小野原が制作するのは自身が集めた大量のステッカーを使ったコラージュ作品。大きいもので約170cmサイズのパネルを数百枚ものステッカーで埋め尽くしたその作品は、見る人に強烈なインパクトを与える。

今年、世界中を旅して集めたステッカーを使ったコラージュ作品の展示を東京・宮崎の2箇所で開催し注目度を高める小野原に、ステッカーというカルチャーの魅力と作品へのこだわりを聞いた。


「モデルは6〜7年ほどやっていて、ステッカーで作品を作り出したのは2014年。元からステッカーは周りにもらったりして何となく集めてはいたんです。それを作品に使おうと思ったのはけっこう衝動的というか。直接的なきっかけは建設現場の仕事で」

作品制作を始めたきっかけが、“現場仕事”という意外なもの。小野原は、モデルの仕事で食べられない頃、アルバイトや短期の仕事で食いつなぐこともあったという。時間と衝動を持て余していた当時のアルバイトのひとつが、建築現場での肉体作業だった。

「現場で170cmくらいの分厚いアクリルパネルが廃材として出ていたんです。何かに使えるかもと思って、もらって帰りました。朝5時にタクシーに無理やり積み込んで、どうにか部屋に運び入れて。そのパネルに何となくステッカーを貼ってみたら面白くて。板にレイアウトして貼っていくだけで、ステッカーの表情がガラッと変わるんです」


ステッカーの使い方は人それぞれ。例えば冷蔵庫などに貼って飾りつける人もいるし、DJならPC、スケーターならデッキにクルーや仲間のステッカーを貼ることも多い。路上の電柱や看板にステッカーを貼りストリートで主張するカルチャーもある。小野原聡の場合はそのどれとも違って、「額の中に入れてステッカーを飾りたいと思った」という。

「写真もプリントと額装したものでは印象が変わりますよね。ステッカーもパネルや額に入れることで、一つの作品として飾りたくなる感じがして。ステッカーって本来は何かに貼り付けるものですけど、貼り付けるモノありきじゃなくステッカーそれ自体を飾るような感覚が面白い」


ステッカーは貼り付けたモノを装飾すると同時に、そのモノの表面に固定される。貼り付けたモノとの関係が常につきまとうのだ。小野原の狙いは、額やパネルというフラットな対象にステッカーを貼ることで、モノありきではなくステッカーそれ自体を鑑賞させることだという。


制作方法はシンプルで、ステッカーを選び、配置を決めながらひたすら切って貼っていくというフィジカルなもの。使う道具もハサミとカッターくらいで、単純自体は単純とも言える。けれどシンプルな分、作業の流れが想像しやすく、途方も無い時間と労力の蓄積が伝わってくる。それが強烈な第一印象を生んでいる。

「ぱっと見て『うわ、すげえ!』って思わせたいんです。アートにも色々ありますけど、僕の場合はまず1発目の衝撃が勝負。だから、ひたすら時間と集中力をつぎ込んでステッカーで埋め尽くしていく」


制作では、1点の作品に対して数百枚のステッカーを使うこともあるという。

「大量のステッカーを使うので手持ちのものだけじゃ足りなくて、日本中を旅をしながらステッカーを集めだしたんです。『ステッカー集めてるんです』っていうと、地元の人が置いてそうなお店を教えてくれたり、そのお店の人がまた別のお店を紹介してくれて繋がっていく。普段は入らない店にもステッカー目当てでどんどん入るんですよね。ステッカーきっかけで、自分の興味のレンジを超えて人や場所と繋がっていくのが面白くて。それに、地域ごとに人の雰囲気もステッカーのデザインも違うんです」

ステッカーに導かれるように地元のコミュニティと繋がり、そのデザインから地域ごとの気質を知る。ステッカーを集める旅での出会いと発見こそが大きな魅力だという。旅のフィールドはすぐに海外まで広がり、インド、カナダ、アメリカなど計13カ国をステッカーを集めてまわった。


小野原は、場所や人との生の出会いや旅で感じた現地の空気感をコラージュのレイアウトに落とし込むという。その言葉を裏付けるように、ステッカーの集め方には、彼の強いこだわりを感じるルールがある。

「ステッカーを集めるためにインターネットを使わないんです。すべて自分の足で店に行ったり人に会ったりして手に入れる。ネットで簡単に大量に買えることは知っているんですけど、そこは譲りたくなくて。やっぱりステッカーって人の繋がりの中で手にいれるのが醍醐味だと思うから。僕もWeb上に作品を載せたりもするし、SNSの「いいね!」ももちろん嬉しいんだけど、なんかそこじゃないんですよね。作品の実物を見て、『あ、こうなってるんだ』とか、デカさとか質感含めて感じてほしい。実物に触れて初めて本当の意味での『いいね!』っていう気持ちが生まれると思うんです」


“その場所まで足を運んで、実物に触れる”という、小野原が見出したステッカーの醍醐味。1枚のステッカーは、手に入れる家庭で出会った人や場所のストーリーを含んでいる。大量のステッカーを使ったコラージュ作品の背景に見えたのは、スピード感や手軽さを重視したインスタントな消費文化に対する、小野原らしいスタンスだ。


PHOTO: 七咲友梨

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