Style
誰にも視覚化されない誰にも言語化されない世界を。
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私は今、宮澤賢治の『言葉』の海に溺れています。彼の言葉には、見えない景色が有り、音があり、意味があり、湿度がある。
近頃の言葉には色気がない。私にはどうも直接過ぎて、たまごの殻のように薄くて繊細に感じてしまう。ふとつけたテレビに、落語番組が流れている。演者は口パクで言葉に合わせて演技をしている。それを見た瞬間、言葉にならず理解不能な感情が押し寄せてくる。落語の意味をご存じですか? とTVに向かって解きたくなる。
SNSでは、すべての物事に、視覚的なおしゃれ感を要求される。世界で起きる奇跡を、科学技術の力ですべて言語化して鼻高々なおじさんもいる。だったら、時には、あなたたちが行う無意識的な失礼な行動にも、目を向けて問い正して欲しいと願うこともある。誰かが人生を賭けて導きだした答えを、あたかも自分が考えたかのように、声高々に自慢する人。あなたの空気からわかります。他人の受け売りだってこと。
わたしは、もううんざりだ。
何も知らなくて良い。ただただ感じたい。
これほど『言葉』は色っぽいものだと。
『ひしげて融けた金(キン)の液体が...』
太陽の昇る様を『押しつぶされて融けた金の液体』と表現する。
宮沢賢治の詩は100人が読めば、100個の景色、音、声、湿度が有ると。
せっかくですから、
誰にも視覚化されない世界。誰にも言語化されない世界を自分自身の中に残したい。
自分の中に哲学と宇宙を。
そういう人に私はなりたい。
白い鳥
Art direction / styling / text : Yukari Ota(SLEEPINGTOKYO)
Photography : Gui Martinez
Hair make-up : Masaki Sugaya(TETRO)
Model : Shizuka Minagawa