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ZEN-LA-ROCK、アナログ的モノ選びの哲学

今年、5年ぶりとなるアルバム『HEAVEN」をリリースし、プロデュースするキャップブランドNEMESも人気のラッパー。ZEN-LA-ROCK。音楽だけなく、そのファッションセンスでも注目を集めている。そんな彼の世界観やモノ選びのセンスを探るべく、ライブやDJ、イベントなどで多忙な彼に自宅取材を申し込んだ。


「普段は片付いてなくても気にしないというか、今年はうれしいことにお仕事がバンバン来て、体験したことないくらい忙しくて。家に帰っても寝るだけみたいになってました。なので、部屋取材のオファーをいただいて、ちょっと早い大掃除のきっかけができてありがたかったです(笑)」

ターンテーブルに棚一面のレコードとCD、天井まで積まれたスニーカー、グッチ柄のベッドカバー。異彩を放つツタンカーメンやピラミッドなどのエジプトモチーフのオブジェ、ソファに並ぶインパクト大のクッションたち。ZEN-LA-ROCKの部屋はどこから話を聞こうか迷うほど、所狭しと物が並ぶ。


「実家が古本屋で本が山のようにあったせいか、これくらい物が多くても平気ですね。それにデータ化するのが得意じゃないんです。Apple Musicにも入っているけれど、音楽はレコードに針を落として聴く方が耳に入ってくる。曲を書くときも、ケータイにメモもするけど、基本はノートや手帳に書いていますね。グーグルなんとかに入れときなよ!とか言われるんですけど(笑)」

確かにアナログのよさを大切にすると、レコードしかり、本やDVDしかり、必然的にモノは増える。ではZEN-LA-ROCKワールド全開のこの部屋のモノ選びの基準とは?

「モノを選ぶ基準……なんですかね? 今日着ているガルフィーの服なんかもそうですがしいていえば人とカブラないことですかね。例えば、本物のグッチよりブートレグ(海賊版)のグッチの方がなんかグッとくる。我が家にある高級ブランドものは1000%ブートレグです(笑)。ルイ・ヴィトンのハンドルも“どブート”ですし。80年代のラッパーたちがこぞってダッパー・ダンのブートレグの洋服を着てたっていう、そういうカルチャーも好きで」


ダッパー・ダンは80〜90年代のNYで活躍した、伝説のテイラーと呼ばれる人物。ルイ・ヴィトンやグッチなどビッグメゾンの生地やモチーフをサンプリングして作られた彼のブートレグウエアは、HIPHOPシーンで絶大な支持を得た。さらに補足すると、当時から30年以上を経た今年、グッチがダッパー・ダンをオマージュした作品を発表。彼自身をキャスティングした広告ビジュアルもニュースになった。

「本家がブートレグにインスパイアされてコレクションや広告を作るって、すごい時代になりましたよね。グッチだから成せるワザだと思いますが」


愛用しているベッドカバーもブートレグだ。グッチのおなじみのパターンに花柄プリントという、ちょっと意外なチョイスだが……。

「このベッドカバー、頼んだものと全然違う柄のものが送られてきたんです。せっかくなのでそのまま使っているんですけど、何でこのデザインが届いたのか。ここ数年で一番のナゾですね……」
 
間違って届いたモノとはいえ、そんなユニークなエピソードもインテリアに華を添えてくれる。彼のモノ選びにまつわる興味深いエピソードは、この部屋でひときわ異彩を放つツタンカーメンのオブジェにも。


「見知らぬ方から『ZEN-LAさん! ツタンカーメン売ってますよ!』ってリプライが飛んできて(笑)。たぶん古道具屋さんで写真を撮って送ってくれたんです。すぐにお店に見に行きましたよ。クオリティも高いのに3点セットで1万円もしなくて即決。お店の方もまさか売れると思ってなかったのか、『え?これ買ってくれるんですか?』って(笑)。エジプト好きとしてはこのオブジェにはパワーを感じましたね。もう10年近く連れ添ってます」

こんな様子でZEN-LA-ROCKの部屋には人を経由して様々なモノが集まってくる。

「人からもらうことは多いですね。『ZEN-LAっぽかったからちょっと買ってきたわ!』みたいな。やっぱり、ちょっとパンチ効いているやつを選んでくれることが多いかな。こんな調子でモノが増えていきます」


近頃は断捨離やミニマリズムという言葉もよく聞くようになり、ライフスタイルやファッションに取り入れる人も多いが、ZEN-LA-ROCKにとっては共感しづらい価値観だという。

「そういう情報も一応耳に入ってきてはいるんですけど(笑)、でも漫画をデジタルで読むとか僕の感覚では本気で考えられないです。それって、家でクラブの中継映像を見て、『クラブにいるのと同じくらい楽しくない?』って言ってるようなもので、それは違うだろ!って。視覚以外にも、匂いや手触り、その場の熱気とか無意識で感じるものもたくさんあると思うんです」


確かにライブで体験する臨場感や実際のモノに触れることで入ってくる情報量は、スマホの液晶画面をスワイプして得られる体験とは比較にならない。

「電車やタクシーに乗ってどこかへ出かけること、そこから“何か”は始まっていると思うんです。行ったことがない駅で電車を降りたりとか、知らない人と出会ったりとか。そういうところにドラマがある。それはモノにも同じことが言えて、この帽子はどこそこで買ったな、あの時のアイツ元気かなー電話でもしてみようかなって考えたり。モノにはデジタルにはない、ストーリー性や人とのつながりが宿っていると思うし、そういうものを大事にしたい」


この発言を聞いて彼の部屋に物が多い理由がわかった気がした。ZEN-LA-ROCKにとってモノは単なる物体ではなく、人とのつながりや思い出を媒介する大切なツールなのだ。

TEXT: 栗林彩
PHOTO: 七咲友梨

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