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フェイストゥフェイスにこだわって益子焼を伝える塚本憲央

「本当にいいもの」を買い付ける・届ける喜び

全国各所の地名を冠した焼き物がムーブメントとして溢れる中、クラフトに疎い人でも栃木県の益子焼の名前を目にしたことがある人も多いのではないだろうか。SNSで広まったイメージとは裏腹に、オーセンティックな益子焼に徹底的にこだわり買い付け販売を行う「器 つか本」の塚本憲央。今日もスケボーで器を片手に益子を、首都圏を走りまわる。

―今回は塚本さんも常連のショップ「16 (Sixteen)」で取材させていただきました。

店主は僕のスケボーの先生みたいな存在で、店のスタッフともよく滑りに行きます。始めて3年くらい、今の移動手段は大体スケボー。乗って行ける範囲なら器もスケボーで届けに行きますよ。


―器を販売するようになったのはつい最近のことだそうですが、益子焼が多い理由は?

実家が寿司屋だったり、家族が陶芸や華道をやってた影響もあり器は常に身近な存在でした。益子焼が多いのは数年前に益子焼最大のイベント、益子陶器市に行った後で出会いがあったからです。正直、陶器市は行ってモヤっとしちゃったんですよ。なんだろう…売ればいい、買えればいいって感じで、しっかり確かめて買う人ばかりではなかったというか。普段の益子も知りたかったし、翌週の平日にまた行ってみたら案の定人は少なかったけどすごくいい雰囲気だったんですね。歩き回ってるうちにふと良い器が置いてありそうな店があって。その店は益子焼の人間国宝に師事した経験のあるおじいちゃんが営んでいて、その方からいろんな職人へとの出会いに繋がりました。本業の傍ら知り合いに頼まれて器の買い付けを続けてきた結果、去年の夏から本格的に「器 つか本」の活動を始めました。


―取り扱う職人はどんな方たちでしょうか。

今は68歳から92歳までの職人6人の作品を売ってます。創作意欲と質をキープしながらいいものを作れる循環を作りたいから、委託じゃなくて全部買い取って販売してるんです。おかげで家が器で溢れかえってる(笑)


―今日は持ってきていただいた器は、現在の一般的な益子焼のイメージとは少し違う印象です。

今はウェブで「益子焼」と検索すると白くて薄い繊細な器が目立つけど、本来は柿釉という渋い茶色の釉薬がかかった渋くてゴツゴツしたものが多い。これは私物で一番よく使っている抹茶椀です。釉薬は使わず「灰かぶり(自然釉)」と言って、器に灰が降り積もり、その灰が土の中の長石と反応してガラス化したものです。毎朝抹茶を点てて楽しんでいます。たまにアイスなんかもこの器で食べています。


―塚本さんが扱う益子焼のポイントはなんでしょうか。

作り方含めてその土地の土をしっかり感じられること。今はネットでいつでもどこでも取り寄せられる土や釉薬を使って、仕上げが安定する電気釜で焼くことが多い。でも、益子の山で採ってきた土、自作した釉薬を使って、薪を焚いて、自作の釜で焼いた器ほど、偶然と必然が混ざり合う面白さがあるんです。


―「器 つか本」を通して、本来の益子焼を知った人も多いんじゃないでしょうか。

そうですね。イベント出店で買ってくれるお客さんは料理が好きで食べるのが大好きな方が多い印象です。僕自身料理も食べることも大好きなので、器に合う料理のことをお話しながら売ってます。器って、食事を盛って美味しく食べて、何度も使っていくことでやっと満点になる道具。取り扱っている器は食事を美味しく見せる色の物が多いですし、使い込むほど風合いも増す。何より愛着が湧くと思います。たまにSNSで食事の画像と一緒にタグづけされてるのを見かけると使ってくれているんだな~とこっちも嬉しくなります(笑)。


―販売の他に金継ぎも承っているそうですね。

使えるところまでなるべく使ってもらいたくて。器は割れたら終わりじゃなくて、金継ぎを施すことで新しい背景ができます。


―器の世界はお作法を知らないと楽しめないのではという不安があります。

ルールを知ることは大事だけど、気軽に直感で使うほうが宝探しみたいで楽しいじゃないですか。「このお皿を勧めてくれた人に他に何があるか聞いてみよう」「スケボー乗った変な人がお皿扱ってるな」とか、陶器の良さを知ることにつながれば入り口はなんでもいいと。スケーター仲間にも僕の活動をきっかけに器に目覚めた人が何人かいます。


―スケボーと器を売ることの共通点は?

できないことができた時の達成感ですかね。実際の作られ方や生産地がどうであれ「益子焼」と称した器が多い中、僕は本物にこだわりたいし、そういうものを残したい、伝えたいという気持ちが強いです。そのためにも歩くかスケボーで探しまわって、できる限りフェイス トゥ フェイスで責任を持って確かめたい。僕の活動を通してその人の価値観にはない「いいもの」を発見してもらえれば。



―今後の活動の展望についてお聞かせください。

個人の方もそうですが、飲食店の器ももっと選んでいきたいです。「器 つか本」の写真を撮影してもらっている写真家の中島大輔([email protected]_nakashima)と器だけの写真集なんて作れたら面白いんじゃないかなと思っています。あとは高齢の職人も大事にしながら、本物にこだわっている若手も発掘していきたい。一辺倒にならず、アンテナをたくさん張って「全方向型人間」って感じで益子焼を中心に陶器の良さを広めていきたいです。


「器 つか本」塚本憲央
2019年夏から「器 つか本」を開始。益子焼を中心に三重の萬古焼や愛知の常滑の焼き物を買い付け販売する他、金継ぎのオーダーも承る。スケボーで行ける範囲はフェイストゥフェイスで届けることをモットーとしている。

Instagram: @utsuwa_tsukamoto
https://www.noriotsukamoto.com/

Text: Ayae Takise
Photography: Masakazu Kouga

Location:
16(Sixteen)
東京都渋谷区神宮前6丁目19-15
https://16shibuya.com


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